「素粒子論」と「幾何学」が同じ考え方で成り立つ?

「素粒子論」と「幾何学」が同じ考え方で成り立つ?

移動する点の動きには法則がある

楕円形のテーブルでビリヤードをしたとき、壁のどの位置から突けば球は再び同じ場所へと戻ってくるでしょうか? 移動する球の動きを追っていくと、実は幾何学的な法則性が潜んでいます。その軌道を微分方程式や解析、代数を使って解き明かすと、球を突くべき位置や角度、速度を見つけることができるのです。このようにある意味、周期的な運動を扱うのが「シンプレクティック幾何学」の特徴です。例えばバネの伸縮や惑星の公転運動などを割り出すこともできます。

「物理学」と「数学」の関係とは?

物理の分野の中でも近年、シンプレクティック幾何学と相性がよいのが素粒子論です。物質を細分化していくと、万物の根源は素粒子になると言われています。しかし一般相対性理論と矛盾する点があるなど、素粒子を根源とすると、説明できない事柄も多数あることがわかりました。
そこで物質は粒子ではなく、ひも状のものから成り立っているという説が生み出されました。これがいわゆる「超ひも理論」なのですが、シンプレクティック幾何学で取り扱っていた、「グロモフ・ウィッテン不変量」と本質的には同じことを指していることが、1980年代にわかってきたのです。

「数学」に期待される新たな役割

数学と物理には不思議な相関があり、互いの研究を見比べてみると実は同じことを扱っているというケースがよくあります。例えば前述のウィッテンは理論物理学者で、1990年代にはサイバーグと共に素粒子論の新たな方程式を見つけ出しました。それはもともと物理現象を説明するための式でしたが、彼自身も予測していたように、数学の問題も解くことができるとわかったのです。
逆に数学が物理の理論に裏付けを与えることもあり、例えば素粒子論は扱うエネルギーレベルが高すぎて、もはや実験で検証しきれません。そうした物理の理論に裏付けを与えることも、数学のひとつの役割となっているのです。

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東京都立大学 理学部 数理科学科 准教授 赤穂 まなぶ 先生

東京都立大学 理学部 数理科学科 准教授 赤穂 まなぶ 先生

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シンプレクティック幾何学

メッセージ

数学には明確な式と答えがあるイメージですが、実際は違います。
実は、数学の世界は「おそらくこうなるのでは?」という予想であふれ、そもそも問題自体が確定していないものも多いのです。例えば、「○○=△△」という予想の右辺は定義できていても、左辺は定義すらできていない、そういうものがたくさんあります。数学はあまりにも高度化し、もはや研究者1人の手で解き明かせるものではなくなってきています。ある意味、すべての人に解決に寄与するチャンスがあると言えるでしょう。

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