星は宇宙空間の少数派

星は宇宙空間の少数派

宇宙に広がる暗黒物質

果てしない夢とロマン溢れる宇宙。遠くきらめく夜空の星と、底知れない真っ暗な闇とのコントラストがいかにも神秘的です。実は、その言葉どおり、宇宙は「暗黒物質」と呼ばれる物質で満たされています。太陽系のような小宇宙では、それを視野に入れることはなくても、銀河系やアンドロメダ星雲など、もっと広い範囲の宇宙を考えるときには、それが重要な意味をもってきます。
銀河系は回転をしているため遠心力が生じるので、それに対して銀河系内の天体の重力がつりあっていないと、天体は銀河系の外に放り出されてしまうはずです。ところが、実際の天体の重力だけを計算すると遠心力に到底及ばないことがわかりました。そこで、「重力を生み出す別の何か」の存在の解明が進められました。その“何か”こそが、暗黒物質なのです。その実体は依然、謎ですが、重力を生み出すモノが存在するのは観測からも明らかです。そしてそれが宇宙空間の実に23%も占めているのです。
暗黒物質に似た言葉としては暗黒エネルギーがあります。これは空間を押し広げる力、つまり負の圧力を持つエネルギーとして考えられています。この暗黒エネルギーは宇宙空間の73%を占めているので、宇宙の大半が暗黒エネルギーと暗黒物質で満たされていることになります。その残りの部分を星などの普通の物質が占めるわけですが、その割合はわずか4%に過ぎないのです。

宇宙空間は空洞だらけ

しかも、星の分布は均等ではありません。もともと物質密度の高いところでは物質が連続的に集まり、銀河を構成します。そして物質密度の低いところはますます密度の低下が進んで真空の空洞となります。したがって、物質のあるところと、そうでないところの濃淡の差は広がるばかりです。
残念ながら、宇宙は星のまたたく輝かしい世界などではありません。空洞と暗黒物質だらけの空間だということが最近の観測でわかってきているのです。

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東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 教授 中本 泰史 先生

東京工業大学 理学院 地球惑星科学系 教授 中本 泰史 先生

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惑星地球学

メッセージ

大学で惑星科学の勉強をしたいと思ったら、高校生の間は、数学から物理学化学、地学、生物学と、幅広く興味を持って勉強することをお薦めします。惑星科学では、どんなものの見方も役に立ちます。しかし、全部の科目をまんべんなく勉強するのはしんどいですよね。そういう場合は、一部だけでもいいです。得意技を身につけましょう。その得意分野から惑星科学の勉強に入り、大学で幅を広げていけばよいでしょう。がんばってください。

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