X線カメラで未知の宇宙を見る
X線カメラと身近なものとの共通点は?
「スマートフォンのカメラ」「太陽電池」「天文衛星に搭載するX線を観測するカメラ」は、どれも基本原理は同じです。半導体を使い、集めた光を電気信号に変えています。スマートフォンのカメラと太陽電池は目に見える可視光を、X線カメラは目に見えないX線を捉えることが可能です。違いは半導体の厚みです。X線は人間の体を突き抜けるほど貫通力が強いので、X線カメラでは可視光用と比べて半導体を10倍以上分厚くしています。
宇宙のX線を観測する
2022年度に打ち上げ予定のX線天文衛星XRISM(クリズム)には、新開発のX線CCDカメラが搭載されています。従来のX線CCDカメラよりも視野が広いため、満月よりも広い範囲を一気に観測できます。衛星のカメラは一度打ち上げると修理できないので、不具合などを想定して対策を用意することも重要です。例えばCCDは、宇宙の放射線を浴び続けると劣化します。CCDの中ではX線を捉えることで発生した電荷をバケツリレーのように運んでいますが、CCDが劣化すると進路上にランダムに穴が空き、電荷をこぼしやすくなるのです。これは自然現象なので防ぐことはできませんが、空いた穴に出会う確率を下げるような手法が開発されました。
誰も見たことのない宇宙を見る
XRISMは、X線CCDカメラとカロリメータという観測装置を搭載して、星が爆発した後の様子を観測します。星の中で作られた元素の種類や飛び散った方向を調べ、どのような星がどのように爆発したのかという現代宇宙物理学の最大の謎の一つに迫ります。X線CCDカメラは視野が広くとてもいい目を持っており、カロリメータはX線の色をこれまでになく鮮やかに捉えます。これらを組み合わせることで、誰も見たことのない宇宙の姿を観測できるのです。
これらの観測装置の技術は、天文学だけでなく、放射線計測・放射線医療・超高感度カメラ開発などの分野でも使われています。また、次世代衛星のためのX線CMOSカメラの開発もおこなわれています。
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先生情報 / 大学情報
宮崎大学 工学部 工学科 応用物理工学プログラム 教授 森 浩二 先生
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X線天文学、宇宙物理学先生が目指すSDGs
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