ゴジラ映画に見る特撮映画評の変遷

ゴジラ映画に見る特撮映画評の変遷

特撮映画『ゴジラ』の登場を受けて

ポピュラー・カルチャー研究の視点から、日本の特撮映画とSFを振り返ってみましょう。戦後約10年が経った1954年、特撮映画『ゴジラ』が公開されました。当時、日本映画では怪獣は新しいモチーフでした。水爆実験ですみかを追われた巨獣が日本を襲うこの映画は、現在では、核の恐怖を描いた作品として多くの批評家が高く評価しています。しかし、公開時の評価はむしろ低いものでした。1960年代半ばごろまでは、文芸評論家や文学者が映画を批評することも多く、娯楽としてよりも、社会にどう資するかを重視していたのです。

SFの定着からオタク文化の勃興へ

1961年公開の『モスラ』は、純文学者が企画に参加しています。1960年代、文学はSF小説や映画にも期待をかけていましたが、SFの側は彼らのSF観を拒絶していきます。また、映画もやがてテレビに押され、文学者の期待に応える高尚な方向ではなく、怪獣対決路線の映画に帰着していきました。そして1970年代後半、1960年前後生まれのオタクによる文化が発生しました。彼らは怪獣対決路線の怪獣映画で育った世代です。いわゆるオタクの源流はSFジャンルにありましたが、オタク文化が隆盛し、SFからも離れていきます。

ゴジラ復活と批評の変化

オタクたちが大人になり発信側に回ると、過去の特撮映画の上映会を開催するなどして、送り手側を刺激しました。1984年にゴジラは復活し、1989年から1990年代半ばまでほぼ毎年、その後も映画が作られました。平成のゴジラシリーズが盛り上がり、オタクたちが映画批評をする側になったのです。作品全体ではなくゴジラの背負うテーマ性をベースに、こういうゴジラの描き方は違うなど、キャラクターの描かれ方を問題にして映画を批判する態度も出てきました。このような、一般のファンがキャラクターを取り上げて好みを論じる傾向は、現代日本のポピュラー・カルチャーにも通じているのです。

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創価大学 文学部 人間学科 准教授 森下 達 先生

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社会学、ポピュラー・カルチャー研究

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メッセージ

なんでも学問にできるのが、ポピュラー・カルチャー研究の面白さです。解釈するうえで基本的な知識は必要ですが、それよりも、作品を素材として生かし、掘り下げる姿勢の方が重要です。そういう意味では学問らしい学問だと言えるでしょう。
ポピュラー・カルチャーが好きなら、対象に真正面から打ち込んで、業績を残してみませんか。知識をまとめて打ち出すプレゼンテーションの力も必要になるので、人と関わって発信することを高校時代からやっておくのもいいでしょう。大学は共通の話題が話せる居場所にもなると思います。

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創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。