多様性を尊重した看護の提供に欠かせない「国際看護学」
多様性を尊重した看護が重要な時代
日本もグローバル化が進み、多様な背景を持つ人が住む社会となっています。看護師は人々の多様性を尊重し、例えば宗教や文化などを考慮し、ニーズに合わせた看護実践が求められます。その国の歴史や社会の発展は、医療制度や健康保険などに影響を与えています。国の背景を知り、対象者を理解することは、看護師に求められる能力です。このように、国の背景を理解し、異文化理解の考え方を取り入れ、個別性を尊重した看護とは何かを研究し実践に繋げていく学問領域が国際看護学です。
国によって異なる医療制度と看護
日本では、体調が悪くなれば気軽に病院に足を運びます。高額な医療費の一部を負担するだけで治療が受けられる「皆保険制度」があるためです。ですがアメリカには、日本のような皆保険制度がなく、貧困層は高額な医療費が払えず、病状が悪化し手遅れになるケースも多いのです。そこで、大学院教育を受けた「ナーズプラクティショナー」という資格を持つ看護師が、限られた範囲で診断や治療や処方をする制度ができました。医師よりも低額で医療を受けられるのです。またドイツでは、小学校卒業後に専門職コースと大学進学コースに分かれたり、実践力を重視し、専門職学校で看護師の資格を取得する看護教育が発展しました。また深刻な看護師不足の為に、病院実習の看護学生に対して賃金が支払われる制度もあります。
より良い医療制度や看護師教育の基本となる研究
少子高齢社会の日本では、医師不足が懸念され、社会の経済格差も広がり、医療制度の見直しが課題となっています。日本の医療制度の在り方を考える上で、海外の制度との比較研究は重要です。どちらが良い悪いではなく、その国の発展の歴史を知り、根拠立てて考えることで、国際的な視野を育むことができます。人々のニードと社会が直面する課題を、背景を踏まえて考察し、時代に即した医療制度や看護の発展に繋がるエビデンスの発信力が、これからの看護師に求められます。国際看護学の必要性はさらに高まっているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。