山火事も宇宙火災も再現!? 「相似則」であらゆる「燃え方」を

山火事も宇宙火災も再現!? 「相似則」であらゆる「燃え方」を

特撮技術が山火事対策に?

近年、国内外で大規模な山火事が頻発しています。その対策のために各地域で被害予測をする必要がありますが、実際に山火事を起こして実験することはできません。そこで、模型で小規模の山火事を再現し、被害を予測する研究が注目されています。
これは映画の特撮と似ています。例えば、10分の1模型で高さ1メートルから物が落ちるところを撮影し、「10メートルから落ちたように見せたい」とします。スケールは違っても自由落下の法則は同じです。自由落下の物理法則の公式を使えば距離を10倍にすると落下時間がわかりますが、それに合わせて映像の落下時間を伸ばす(再生速度を遅くする)と、10メートルから落ちたように見えるのです。

室内で山火事実験!?

このように、ある現象に作用する要素を使って、全然違うスケールや環境で同じように見せるための法則を「相似則」といいます。これを山火事に適用すれば、模型で燃やす実験で実際の規模の被害予測が可能になるわけです。
ただし、そう簡単にはいきません。山火事の相似則は自由落下よりも作用する要素が多く複雑になるからです。すべての要素を適切に組み合わせるのは難しく、予測したい場所や、広がる速度・範囲、炎の高さなど、予測したい内容ごとに、中心的に作用する要素を抽出して相似則の候補を立て、その妥当性を検証していきます。今、山火事を予測可能な相似則を見つける取り組みが進んでいます。

室内で宇宙燃焼実験!?

燃焼の相似則を使えば、無重力での燃焼状態を宇宙に行かずとも地上で再現できます。重力があると炎が上に伸びますが、これは重力がある限りどうすることもできません。ところが、燃焼現象の作用素を元に立てた相似則を用いると、低圧下で宇宙と同じような丸い炎を作ることができるのです。この特性を利用して、宇宙での火災被害予測に活用できないかが検討されています。
ほかにも、爆発や災害事故など再現が難しい燃焼事象に対して相似則を求めることで、問題解決に近づけることが期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

豊橋技術科学大学 工学部 機械工学系 教授 中村 祐二 先生

豊橋技術科学大学工学部 機械工学系 教授中村 祐二 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

燃焼学、火災物理科学、宇宙工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

大学は知識を得る場と思われがちですが、むしろ得た知識を「どうやって使うかを学ぶ」場です。なので、あなたが「やってみたい」と思える目標・夢を持っていると、今あるいはこれから身につける知識をどうやって使えばその「やってみたい」を達成できるのか、自らで体験できる場所です。大学には様々な専門家、専門書が詰まった図書館などの知的環境が整っていて、やりたいことをやれる自由な時間がたっぷりあります。卒業や資格取得を目的とするのも悪くはないですが、せっかくなので思いっきり「やってみたい」を実現してみませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

豊橋技術科学大学に関心を持ったあなたは

本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。