地域の「支え合い」を考察する社会福祉学

地域の「支え合い」を考察する社会福祉学

人とつながる「場」をつくる

「人とのつながりが豊かだと、心の健康が保て、幸福を感じる」といわれています。近年はコロナ禍の影響もあり、対面でのつながりが制約を受け、それを補完するオンラインのつながりが注目を集めました。しかし、オンラインのつながりが、対面でのつながりを十分に補完できるかといえば、必ずしもそうではありません。実際に対面で「信頼できる人と交流できる場」があり、そこが「自分らしくいられる場」であれば、「人とつながりたい」という気持ちを持つことができます。

自分らしくいられる場とは?

ある地域のサロンでは、運営スタッフにより高齢者と大学生とが交流できるような仕掛けが準備されています。たとえば「折り紙」のように、初対面であったとしても、年齢を問わず、誰もが同じ立場で楽しめるものです。折り方が分からないと、高齢者が大学生に教えることもあれば、その逆もあります。折るのが早い、丁寧にきちんと折るなど、折る過程でかいまみえる個性は、完成した作品にも表れます。完成した作品をお互いに見て感想を話すことで、その人の新たな一面に気づいたり、気づいていなかった自分の一面を知ったりすることもあります。さらに折り紙以外にも会話がひろがり、少しずつお互いを知ることができれば、関係を深めていくきっかけもできます。「若者」や「高齢者」としてではなく、一人ひとりに心を寄せるような関係ができる場をつくることが大切です。そうすれば、継続したつながりが期待できるでしょう。

地域共生社会のために

こうした小さな交流を続けることが、お互いを理解して気にかけ合う関係づくりにつながります。その際にはどちらかが「支える側」「支えられる側」になるのではなく、各自ができることを引き出していくのもポイントです。地域住民たちでお互いを支え合う「地域共生社会」の実現に向けて、「これをやればうまくいく」という、すべての人に当てはまる明確な答えはありません。さまざまな事例の積み重ねから、一人ひとりの幸せに結びつく方法を探していくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 文学部 人間学科 准教授 岩川 幸治 先生

創価大学 文学部 人間学科 准教授 岩川 幸治 先生

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社会福祉学

先生が目指すSDGs

メッセージ

福祉というと、「病気や貧困といった困りごとを抱えた社会的弱者への支援」というイメージがあるかもしれませんが、「人々が幸せに暮らすこと」が福祉の本来の姿であり、社会で生きる全員が福祉の対象です。日々の暮らしにおいて、いかに楽しく張り合いを持ちながら過ごせるかが、幸せを感じるポイントの一つです。そのためには、さまざまな人との関わり合いが欠かせません。高校生のうちに外に目を向けて、さまざまな人たちと接してみましょう。お互いを理解し合うことが、幸せの第一歩につながります。

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。