奨学金制度から考える、ソーシャル・ファイナンスの重要性
大学生の4割が利用する奨学金制度
日本の大学生の約4割が、大学で必要な学費を得るために奨学金制度を利用しています。奨学金制度は、日本学生支援機構(JASSO)による奨学金のほか、団体や企業などが提供する各種プログラムが存在します。2020年度には高等教育の修学支援制度が始まりました。
奨学金制度は大きく分けて、返済不要の「給付型」と、卒業後に返済する必要のある「貸与型」とに分類されます。さらに貸与型の奨学金制度は、返済時に利息がつくものとつかないものとに分かれます。奨学金制度を利用するには、学力や経済状況などがその制度の受給基準を満たしていなければなりません。
場合によっては人生設計にも影響
貸与型の奨学金制度を利用した人は、卒業後に返済していかなければなりません。制度によっては、数百万円もの借金を背負って社会に出る形になるため、卒業後の人生設計にも大きく影響します。なかには奨学金の返還が滞り、自己破産してしまう人もいます。人生の可能性を広げるはずの奨学金ですが、逆に不幸な結果につながってしまう恐れもあるので、利用する際には充分に情報を集めて、慎重に検討する必要があります。
海外に目を向けると、北欧では高額な税負担の代わりに、学費は無料となっている国があります。米国などでは、高額な学費を奨学金だけでは充分カバーできずに、卒業後に自己破産に陥る人も多くいて、社会問題化しています。ほかの国々と比較すると、日本では、教育費に対する公費の負担割合が低いという課題があり、政府は修学支援制度の拡充を政策課題に掲げています。
奨学金制度はなんのためにあるのか
奨学金制度は、学生の勉学をサポートして優れた人材を輩出することで、より良い社会を築いていくための制度です。社会や環境を良くする金融、すなわち「ソーシャル・ファイナンス(社会的金融)」の観点から奨学金制度を考えると、経済的な支援を必要とする学生に充分な支援が行きわたるようにすること、また個々の学生の事情に即した柔軟な制度の運営が重要だといえます。
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明治大学 経営学部 公共経営学科 教授 小関 隆志 先生
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