「格差」をなくすには、まず「貧困」への意識を変えること

「格差」をなくすには、まず「貧困」への意識を変えること

6人に1人が貧困の時代

日本の貧困率は16.1%で、6人に1人が貧困の状況にあります。特に、深刻なのが子どもと若者の貧困です。子どもの6人に1人が貧困であり、若者にいたっては20~24歳の5人に1人が貧困です。日本には飢え死にする子どもはいませんが、ご飯におしょうゆをかけるだけの夕食の子どもがいます。現在、小学生の段階で、すでに子どもの学力と親の所得には強い相関がみられます。「努力して勝ち取ったのだから高卒と大卒の所得格差はあって当然」という論調もありますが、勉強ができる環境に置かれていなかった人、進学をあきらめざるを得なかった人も大勢いるのです。そして、貧困は連鎖します。貧困に育った子どもは、大人になっても貧困から抜け出せない確率が高いです。

「子どもの貧困」の解決に向けて

長年、失業率が低く、正規雇用が当たり前だった日本は、他国に比べ、いわゆる低所得者層への現金給付が圧倒的に少ない国です。しかし、ようやく日本においても、「子どもの貧困対策法」が2013年に成立しました。
現時点においては、学校におけるスクールソーシャルワーカーの数を増やし、ひとり親世帯への給付金を増額するといったことが行われました。日本の財政が厳しいため、まだ十分とは言えませんが、政府がこの問題を認識するようになったのは大きな一歩です。

18歳選挙権の意味することは

世の中の機運が高まらなければ、社会は変えられません。OECD加盟国の中で国としての給付型奨学金がないのは日本とアイスランドぐらいでしたが、長年議論にさえなりませんでした。また、生活保護を受けることが、バッシングの対象となったり、高齢者に比べ、子どもの声は取り上げられにくいという傾向があります。日本人は概して貧困への理解度が低く、現状をそのまま受け入れているところがあるので、貧困をなくすためには、まずは人々の意識を変えることが必要なのです。当事者の若者の皆さんの声を届けるという意味では、18歳から選挙権が与えられることは、大きな転機といえるでしょう。

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東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室 教授 阿部 彩 先生

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貧困・格差論、社会保障論、社会政策学

メッセージ

進学できることを当然と思わず、恵まれた環境にあるのだと自覚してください。その上で社会に出てから、思いを果たせない人に手を差し伸べる方法を考えてほしいと思います。
日本をこのまま格差が拡大していく国にしていいのでしょうか? 社会の一員である以上、誰もがこの社会を作る責任を負っています。両親や祖父母の介護など社会保障は他人事ではありません。こうした日本の現状を把握しておくことは、将来どんな職業に就いても生かせるはずです。

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