日常に溶け込むことばから人々の感性や都市をデザインしてみる
ふりがななしでもフランス語が読める?
公共空間は多種多様なことばや記号に囲まれていますが、これらのことばの使われ方や社会文化背景を研究することを「言語景観」といいます。例えば、街を歩くと看板や広告に意外とフランス語が多いことに気づきます。「café」や「marché」を読める人は多いでしょうが、そのほかフランス語から変異した不思議な現象もあります。例えば、化粧品メーカー、ゲームのキャラクター、スポーツ飲料など、アルファベット表記に同じアクセント記号が付いていたり、日本語のカタカナ表記の上にアクセント記号ついているものやスペルはイタリア語でもアクセント記号はフランス語というカフェもあります。日本人の語彙にフランス語由来のものが定着していると推測されます。
ことばは単なる情報伝達手段ではない
高価な化粧品や食品などにはフランス語が使われる傾向にあるようです。英語由来の「チョコレート」よりもフランス語由来の「ショコラ」の方が高品質なイメージなのかもしれません。文字のフォントもフェミニンやラグジュアリー性を伴うケースが多く、雰囲気や印象で言語選択が行われます。このような例から、人々がフランス語に対して抱いているイメージや印象を、視覚や音に置き換えて活用していると推測されます。したがって、ことばは単なる情報手段ではなく、伝えたい印象を「デザイン」したものだといえます。
マルチモダリティで社会の感性を高める
音や視覚情報や香りなど、複数の表現手段を組み合わせたメッセージの様相を「マルチモダリティ」といいます。消費者に単語を見た時の印象を調査することで、商品開発や都市デザインに応用は広がります。マルチモダリティの見方を感性と空間のデザインに活用すると、日常生活の質を高めることができます。人々を和ませる広場や通り、すごしやすい施設や職場、魅力的な商品や店名などです。社会にある閉塞感を打破したり、悲嘆に暮れている人を前向きにしたり、人々の感性や社会全体の雰囲気を改善できる可能性があります。
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獨協大学 外国語学部 フランス語学科 教授 木田 剛 先生
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