早期に「自立」を強いられる児童養護施設の子どもたち
社会の責任で育てる
児童養護施設は、保護者のいない子どもや、不適切な養育など、何らかの事情で保護者による養育が難しい子どもに対して、安定した生活環境を整え、成長後の自立を支援するための施設です。困難な状況に置かれた子どもたちを社会の責任で育てる「社会的養護」という考えに基づいています。児童養護施設で暮らす子どもたちのおよそ4割に何らかの障害があることが報告されています。近年、障害のある子どもの割合は高まってきており、より手厚い支援が必要だと考えられます。
18歳になったら
これまでの児童養護施設では、基本的に18歳になると施設から出て自立しなければなりませんでした。近年、全国的には大学等の進学率が50%以上を超えるなかで、施設退所後に大学等に進学する子どもはわずか10%ほどです。退所後に親を頼ることが難しいケースが多いため、進学するためには高校生のときからアルバイトなどをしてお金を貯めなければなりません。奨学金の利用も考えられますが、すべての子どもが利用できるわけではありません。そのため、退所後は多くの子どもが就職という選択をせざるを得ない状況ですが、仕事がうまくいかずに経済的にも精神的にも深刻な状況になることも少なくありません。
すべての子どもが安心して生活できる社会に
近年では、児童養護施設で育った子どもたちの問題だけでなく、子どもの貧困、発達障害、不登校やいじめなど、子どもをめぐるさまざまな課題が注目され、その困難な状況を明らかにし、社会のしくみを改善したり新たに構築したりする必要性が高まっています。こうした状況のなか、児童養護施設などの社会的養護で育った経験のある当事者たちがさまざまな意見を社会に向けて発信する取り組みがはじまっています。ソーシャルワーカーや福祉領域の専門家は、こうした人々や何らかの障害などにより自分の経験や意見を発信することが難しい人とともにあることで、社会を変えていくための原動力になることができるでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
上智大学 総合人間科学部 社会福祉学科 教授 新藤 こずえ 先生
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