デンマークはなぜ付加価値税を25%まで引き上げることができた?
高い税負担にも不満が少ないデンマーク
欧州諸国では、日本よりも20年以上前から、日本の消費税に相当する付加価値税が導入されています。中でも、デンマークでは付加価値税率が25%と非常に高く、軽減税率もほぼ導入していません。それでもデンマークの人々からは、高い付加価値税に対する不満は日本ほど上がっていないのです。なぜでしょうか?
財政民主主義が根付いている国
デンマークには歴史的に、労働(赤)と農業(緑)の連帯を体現する「赤緑同盟」の伝統があります。デンマーク政治では、彼らを包摂するために、幅広い普遍的な社会保障サービスが整備され、その原資として重い税負担が導入されました。これによって、デンマークの社会民主主義への支持が続いてきた側面もあります。現在でも、高い水準の付加価値税や地方所得税によって、低所得者に対する手厚い所得保障や税財源による対人社会サービス(医療、介護、保育など)が提供されています。
デンマークでは、議会だけでなく、学校や地域など日常の様々な場面で政治について議論が行われます。子どもたちも日常的に政治や政策・制度に関心を持ち、地域の政党活動に参加している人も少なくありません。国や地方自治体の策定する予算への関心が薄く、決算へのチェックも十分働かない日本とは対照的です。日本では、デンマークのような財政民主主義は根付いていないのです。
「多様性」とどう向き合うか
その一方で、2000年代以降のデンマークでは、移民に対して排外主義的な政策を掲げる政党の勢いが増大しているという課題もあります。「福祉ショービニズム」といって、自国の国民には福祉を保護し、それ以外の例えば移民等は福祉から排除していく考えが浸透し、高福祉高負担の合意が得づらくなっているのです。多様性に対する脆弱(ぜいじゃく)さ、「リベラル・パラドックス」とも呼ばれる現象に、デンマークは直面しています。「多様性」とどう向き合っていくか、これからの経済学や財政学で追究していくべき重要なテーマの一つとなっています。
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明治大学 政治経済学部 経済学科 准教授 倉地 真太郎 先生
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