日本が育てた少女マンガ文化
少女マンガが発展した理由
日本の少女マンガは、国際的に見ても大変豊かで影響力が大きいものです。実は欧米ではここ数十年、マンガは男性の文化で、少女マンガというジャンルはありませんでした。そこに日本の少女マンガが入ってきて、「女の子も読めるマンガがある!」と肯定的に受けとめられたのです。そしてヨーロッパ全域、アメリカ、アジアと非常に速く伝播(でんぱ)していきました。
ではなぜそもそも日本では少女マンガが発展したのでしょうか。もともと日本には、明治時代の終わりごろから、少年向け、少女向けに分かれた雑誌文化がありました。戦前は挿絵付きの小説などが人気だったのですが、戦後、しだいに雑誌の中のマンガの分量が増えていきます。それでも50年代までは、少女誌でも男性の作家が多かったのですが、60年代後半頃から、戦後生まれの若い女性作家が活躍するようになりました。少女マンガは、読者に近い世代の作家が、新しい世代の女性の夢や願いを表現する世界でも稀なジャンルとして発展していったのです。
日本の少女マンガ独特の繊細な表現
日本の少女マンガの特徴としてよく指摘されるのが、繊細な感情表現です。日本の少女マンガは、描く人と読む人の年齢が近く、読者の「おねえさん」的な感覚で描かれています。恋愛や家族、学校のことなどについて、上から「教えてやる」というスタンスではなく、「こうだったらいいな」というスタンスにより、若い世代の価値観をうまく先取りしているものになっていきました。この繊細な表現は、海外でも高く評価されています。
少女マンガの与える影響
現在、少女マンガ雑誌はかつてほどの部数は出ていませんが、単行本としては安定した売り上げを誇っています。また少女マンガの手法や絵柄は、少年誌や青年誌のマンガにも影響を与えているほか、男性向けのマンガ誌で活躍する女性マンガ家も増えています。「少女マンガ的なるもの」は形を変えても、いまだ大きな影響力を持っているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。