北欧のフォルケホイスコーレ:実践共同体で育む人々のキャリア
生涯学習とキャリア
人がキャリアを形成していくうえで、生涯学習は重要な要素のひとつです。ライフステージに応じて学び直しをすることで成長を促せるからです。そこで、全世代に生涯学習が根付いている地域として北欧が注目を集めています。事例のひとつが「フォルケホイスコーレ」という生徒と先生が一定期間寝食をともにして学ぶコミュニティ型の教育機関で、そこではスポーツや演劇、音楽、アウトドア、ゲーム開発など同じ関心ごとを持つ人々が集まり、相互交流を通して学びます。このような集団を経営学では「実践共同体」と呼びます。
キャリアに影響を与える実践共同体
フォルケホイスコーレには、キャリア形成にポジティブな刺激を与える実践共同体の特徴が見られます。中でも重要な要素が、自己開示の機会が多いことと、模範となる人物が身近にいることです。全寮制のフォルケホイスコーレでは自己開示の機会も多く、周囲からのフィードバックや社会で必要なソーシャルスキルが得られます。また、困ったときも模範となる人が身近にいると、その人の実践から解決方法を学べるため、キャリア形成に高い効果があるとわかりました。
日本に浸透させるには?
フォルケホイスコーレをそのままの形で今の日本に導入することは難しくても、そこで行われる相互作用を日本の実践共同体に応用することはできます。また研究が進むにつれて、フォルケホイスコーレでの相互作用によって得られるものには、小さな成功体験と、価値観が変わるような大きな学びの2種類があることがわかってきました。小さな成功体験は普段の生活でも比較的得やすいです。一方で価値観が変わるような学びは、これまでとは違うコミュニケーションスキルを求められる共同体に身を置いたときや、コミュニティ内で与えられた役割をうまく果たせず挫折を感じたときなどに得られる傾向が見られます。こうした相互作用の仕組みを、例えば企業が実施するインターンシップや若い社員の方が含まれる職場の学習コミュニティにうまく組み込もうと試みが続けられています。
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先生情報 / 大学情報
宇都宮大学 データサイエンス経営学部 データサイエンス経営学科 准教授 森田 佐知子 先生
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