講義No.12057 医療技術

呼吸筋を鍛えて快適な毎日を!

呼吸筋を鍛えて快適な毎日を!

呼吸ができるのは呼吸筋のおかげ

人間のあらゆる動作に欠かせないのが筋肉です。筋力アップをめざし、腕や脚のトレーニングに励む人は大勢いますが、内臓を動かしているのも筋肉だということは見落とされがちです。特に呼吸は当たり前のことなので、気に留めることはほとんどありませんが、横隔膜や肋間(ろっかん)筋など、肺の周りにある呼吸筋が動くことで、息を吸ったり吐いたりしています。病気や加齢などで呼吸筋力が低下すると、肺を広げられなくなり、肺自体も硬くなってしまいます。呼吸が浅くなり、新鮮な空気を肺に送り込めなくなるので、息切れや集中力の欠如が生じ、日常生活に支障が出ることもあります。しかし呼吸筋は手足同様、鍛えることが可能です。

呼吸筋力の衰えは、咳の力の低下も招く

呼吸筋力を高める運動療法は理学療法士が行います。例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)になると、動くとすぐに息が切れ、うまく息が吸えなくなります。そんな患者に対して、棒を使ったストレッチや、大きく吸った息を、口をストロー状にして吐き切る呼吸法など、患者の症状に応じた指導により呼吸筋力向上をめざします。また、病気のため入院治療が必要な患者には、咳の練習も行います。入院中は活動が制限され、運動する機会も減るため、呼吸筋力が衰え、咳の力も低下します。気管に入った異物や痰を排出できずに肺炎を発症することもあり、それを予防することが目的です。

水中運動による呼吸筋力アップに期待

関節などへの負荷を軽減しながら筋力向上を促せる水中運動は、息を吸う時にも適度な抵抗が加わることから、呼吸筋力向上への有効性が明らかになっています。タバコを原因とし中高年層に多いCOPDや、足に痛みのある患者への導入が期待されています。また年齢を問わず、二次的肺合併症を引き起こす因子の1つに肥満があります。特に首と腹回りに脂肪が多いと呼吸に影響を及ぼすため、適度な運動による体重や体脂肪の管理も、正しい呼吸には重要なポイントです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

藍野大学 医療保健学部 理学療法学科 教授 山科 吉弘 先生

藍野大学 医療保健学部 理学療法学科 教授 山科 吉弘 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

理学療法学、呼吸理学療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

理学療法士はスポーツ傷害の患者さんをみるというイメージが強いと思います。もしかしたらあなたは、スポーツに関心がないので理学療法士にならない、と考えているかもしれません。しかし実際、理学療法士は、呼吸器をはじめ、心臓や脳の病気、がん、子どもの病気など、さまざまな患者さんと関わります。
学ぶことはたくさんありますが、必ず自分の興味のある分野に行きつきます。疾患に関する豊富な知識を生かして多くの人と関わり、役立てる職業だということを、ぜひ知ってほしいです。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

藍野大学に関心を持ったあなたは

藍野大学は、医療法人恒昭会藍野病院附属准看護学院として指定を受けて以来、40年以上の間、看護教育を中心とし、医療分野の養成校として、培ってきた教育ノウハウにより、日々高度化されていく医療に対応の出来る医療人を育てます。「教育」「臨床」「研究」の三位一体で行なう教育体制のもと、医師中心の医療体制から、患者さんとそのご家族を中心に展開するチーム医療「シン・メディカル」を各学科の共通テーマとし、それぞれの分野で活躍し、シン・メディカルの実践者として、広く社会へ羽ばたいてほしいと願っています。