呼吸筋を鍛えて快適な毎日を!
呼吸ができるのは呼吸筋のおかげ
人間のあらゆる動作に欠かせないのが筋肉です。筋力アップをめざし、腕や脚のトレーニングに励む人は大勢いますが、内臓を動かしているのも筋肉だということは見落とされがちです。特に呼吸は当たり前のことなので、気に留めることはほとんどありませんが、横隔膜や肋間(ろっかん)筋など、肺の周りにある呼吸筋が動くことで、息を吸ったり吐いたりしています。病気や加齢などで呼吸筋力が低下すると、肺を広げられなくなり、肺自体も硬くなってしまいます。呼吸が浅くなり、新鮮な空気を肺に送り込めなくなるので、息切れや集中力の欠如が生じ、日常生活に支障が出ることもあります。しかし呼吸筋は手足同様、鍛えることが可能です。
呼吸筋力の衰えは、咳の力の低下も招く
呼吸筋力を高める運動療法は理学療法士が行います。例えば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)になると、動くとすぐに息が切れ、うまく息が吸えなくなります。そんな患者に対して、棒を使ったストレッチや、大きく吸った息を、口をストロー状にして吐き切る呼吸法など、患者の症状に応じた指導により呼吸筋力向上をめざします。また、病気のため入院治療が必要な患者には、咳の練習も行います。入院中は活動が制限され、運動する機会も減るため、呼吸筋力が衰え、咳の力も低下します。気管に入った異物や痰を排出できずに肺炎を発症することもあり、それを予防することが目的です。
水中運動による呼吸筋力アップに期待
関節などへの負荷を軽減しながら筋力向上を促せる水中運動は、息を吸う時にも適度な抵抗が加わることから、呼吸筋力向上への有効性が明らかになっています。タバコを原因とし中高年層に多いCOPDや、足に痛みのある患者への導入が期待されています。また年齢を問わず、二次的肺合併症を引き起こす因子の1つに肥満があります。特に首と腹回りに脂肪が多いと呼吸に影響を及ぼすため、適度な運動による体重や体脂肪の管理も、正しい呼吸には重要なポイントです。
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先生情報 / 大学情報
藍野大学 医療保健学部 理学療法学科 教授 山科 吉弘 先生
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