望ましい方向へ人の行動をいざなう仕掛学
「仕掛け」で人の行動が変わる
街の中には、「トイレをキレイに使いましょう」「自転車は整頓して並べましょう」などの標語がたくさん掲げられていますが、残念ながらその通りに行動する人は少ないかもしれません。しかし男子トイレの小便器で尿の飛散が最小になる位置に目印をつけたり、駐輪場に駐車位置の目安となる白線を引いたりすれば、自然と行動がうながされ、自然と問題が解決していることがあります。このように、正論を頭では理解していながらなかなか行動に移せない人たちが、「ついしたくなる」ように視点を変え、問題解決のきっかけになるものを「仕掛け」と呼んでいます。
人間の反応は複雑
「仕掛け」は「必ずこうしなければならない」と強制するものではなく、行動するかしないかは各自に委ねられています。そのため同じ仕掛けであっても、設置した環境や対象となる人によって反応の度合いは異なり、狙い通りの行動変容につながらないこともあります。そこで、どのような仕掛けなら効果があるのかを解明するため、仕掛けに対する人々の反応を統計的に調査していくのが「仕掛学」です。仕掛けに人がどう反応するのか、そのメカニズムは複雑で、解明するには心理学や行動経済学、さらには工学やデザイン学など多彩な分野の学びが関係してきます。
問題解決のアプローチとして
人が何気なく行っている動作や選択であっても、必ず何らかの理由があるはずです。そのため、街の中で人々の行動を観察するほか、自分自身の行動を客観的に振り返ることでも、社会には多くの「仕掛け」が存在していることに気づいたり、新たな仕掛けのヒントが見つかったりします。
世の中には、技術や正論だけでは解決が難しい問題が山積しています。また正論だけでは息苦しい世の中になってしまうかもしれません。そのような社会にあって、望ましい方向へ人の行動をいざなう「仕掛け」が、課題解決のアプローチとして有効に作用することもあるのです。
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大阪大学 経済学部 経済・経営学科 教授 松村 真宏 先生
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