自動運転や空飛ぶ車の命綱、「通信」が途切れないアンテナを作れ!

自動運転や空飛ぶ車の命綱、「通信」が途切れないアンテナを作れ!

移動体無線通信

一般にアンテナといえば、以前は多くが家の屋根やベランダに設置されるテレビ用のものでした。現在はスマートフォンや自動車のナビなどにも、無線通信用のアンテナが組み込まれています。テレビの場合、スカイツリーなどの電波塔の場所は変わらず、家のアンテナも固定されています。しかし、スマートフォンや自動車は移動しますし、車間通信ではお互いが移動しています。移動に伴って電波が来る方向や強さが変化するため、そのような環境でも常に通信を行うには、それに適したアンテナが必要なのです。

複数のアンテナを駆使

移動しても通信を途切れさせないために、複数のアンテナを使うことでさまざまな方向から来る電波を送受信できるようにしています。各アンテナで受信した信号から、通信相手のいる方向を推定し、その方向に絞って電波を送ることも実現しています。さらに、アンテナごとに異なるデータを受信することで、通信を高速化しています。
開発されたアンテナの評価も重要です。屋外でアンテナを試してみても、その時の天候や周囲の状況などに影響されてしまい、正確な評価ができません。そのため、実験室内でさまざまな電波環境を作り出す装置が開発されています。評価したいアンテナの周囲に多数のアンテナを置き、各アンテナの出力を制御することで、建物による電波の遮断や反射などを想定した環境を模擬的に作り出し、その中での評価を行うことができるのです。

空飛ぶ車やドローンも

移動体通信は、自動車の衝突防止にも利用され、自動運転においても重要な役割を果たすようになりました。さらに、ドローンや空飛ぶ車といった飛行物体の通信も今後ますます必要になってきます。自動車は水平方向にしか動きませんが、飛行物体はあらゆる方向に移動できます。自動車などに用いるアンテナをベースに、垂直方向への通信にも対応できるアンテナが開発されています。特に人を運ぶ場合、通信が途切れると命に関わります。幅広い環境で確実に通信できる技術は、今後ますます重要になっていくのです。

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富山大学 工学部 工学科 電気電子工学コース 准教授 本田 和博 先生

富山大学 工学部 工学科 電気電子工学コース 准教授 本田 和博 先生

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通信システム工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

社会のさまざまな問題を解決するために、「通信」が役立てられるようになってきています。新しい通信技術が開発され、その技術を使うことで新たな機器やサービスのアイデアが生まれたり、次のニーズが現れたりします。社会の変化やほかの分野の技術の発展との二人三脚で、通信技術は発展しているのです。未来の社会を作るために欠かせない、アンテナの開発や評価に一緒に取り組みませんか? 数学や物理を難しいと感じることがあるかもしれませんが、基礎的なことをしっかり学んでおけば大丈夫です。

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