匂いと照明で集中力アップ。明らかになったその相関関係
住環境を科学する
住みよい住環境、室内環境とはどのようなものでしょうか。広さ、騒音、風通しなど、人によって優先順位は違いますが、最も意図的に変化させやすく、身近なものの一つとも言えるのが匂いです。環境科学の中には、この匂いが人間の感覚にどのような作用を及ぼしているかの研究も進められていて、その結果、さまざまなことがわかってきました。
匂いが人に与える効果とは?
特に興味深いのは、匂いと照明の相関関係です。ある実験で、匂いと照明を変えた数パターンの室内環境で過ごした人がどのような印象を持ち、実際にどんな影響を及ぼしていたかのアンケートを実施しました。すると、適度な照度での白色蛍光灯下では、フローラル系の適度な匂いは、より心地よさを増しました。一方で、薄暗い照明や原色系の強い光の状況下における不快なアンモニア系の匂いも、不快度を増したというデータが得られました。つまり、快適な照明下で心地よい匂いは感覚的な快適さを助長し、不快な照明下での不快な匂いは感覚的な不快度を助長するという結果が得られたのです。
また、同様の条件下で、簡単な計算問題を出題し、計算スピードと正答率も比較したところ、匂い、照明ともに、快適な環境下での精度が非常に高かった半面、不快な環境下での精度は圧倒的に低いものとなりました。特に柑橘系の匂いにおける集中力アップは顕著で、学習環境としては非常に適していることも合わせてわかっています。
学習効果アップにも期待できる
アンケートのような主観的なデータに加え、正答率やスピードなどの客観的データを得ることで、匂いや照明が人の集中力や脳の処理能力に大きな影響を及ぼすことが明らかにされています。近年では部屋の匂いをコントロールする商品も多彩で、入手も比較的容易になってきています。単純に住みよい部屋になるというだけでなく、自分が心地よいと感じる匂いの種類や強さ、そして照明の中で勉強に取り組めば、学習効果アップも大いに期待できます。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 工学部 建築環境学科 講師 二科 妃里 先生
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