快適な住まいを支える「環境工学」のチカラ
夏は涼しく、冬はあたたかい住環境へ
日本の伝統的な建築は、木造や土を使うなど、基本的に各地域にある身近な素材が使われてきました。現代の一般的な建築は、工場で材料を加工して建てるというイメージがあるかもしれませんが、本来、建築は自分で手に入れられる素材を使い、周囲の人たちが協力して行われていた歴史があり、それが建築の原点でもあります。ただし、古くからの日本の伝統的な民家は「夏は涼しいけれど冬は寒い」というような難点を抱えていました。そこで、人と環境に配慮した住空間をつくるために、エンジニアリングの部分である温熱環境や快適性などを考える「環境工学」が用いられるようになりました。
伝統的な技法と現代の技術の融合
日本の伝統的な建築手法では、金物を使わない木組みが用いられます。また、快適で住みやすい家づくりを行うため、自然の光や風の流れを取り入れる考え方に基づいています。このように環境を利用した伝統技法と現代の技術を融合させた環境工学が、より快適な住まいづくりを支えています。
例えば土壁は、冬は寒くて暗いとネガティブな印象と持たれがちですが、熱容量があり、あたたまりにくく冷めにくい、土鍋のような効果があります。室内全体の気温の変化を穏やかにし、快適に過ごしやすくするのです。また、湿気でジメジメする時や乾燥する時は吸放湿性が働き、室内全体の湿度の変化も穏やかにしてくれます。土のしっとりした風合いや風情は、ビニール素材とは異なる自然の素材を五感で楽しめるのも特徴です。
人生が楽しくなる建築
今、日本だけでなく世界中を見ても同じような建物がつくられています。性能と経済性を合理性で特化していくと、ある程度似たような形の建物にそろってしまいがちです。しかし、かつてのようにもっと地域性や地域の特色を生かし、多少無駄かもしれなくても楽しいと感じ、自分らしさや、わが家らしさを持つ建築を追求すると、これからの建築はもっと豊かになるはずです。
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先生情報 / 大学情報
愛知産業大学 造形学部 建築学科 教授 宇野 勇治 先生
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