自信はどこから生まれる? 若者の社会的自立支援のための居場所作り
自信が自立につながる
社会的自立がうまくいかない若者が、必要としているものはなんでしょうか? 勉強や就職に力を入れることも自立への手段のひとつですが、現状から一歩踏み出すために「不安だけど…でも大丈夫」という“根拠のない自信”を持つことも大切だと考えられています。
ドイツの哲学者ホネットは、自信は人との関わりの中で生まれてくるのだと説きました。例えば赤ちゃんは周囲から愛される傾向にあります。このとき周囲の人は、「将来この子に養ってもらえるはずだ」と見返りを求めているわけではなく、無条件の愛情を抱いています。こうした人との強い結びつきの中で、赤ちゃんはなんの知識がなくても安心感を抱き、“根拠のない自信”を持てるのです。
若者に安心感を与える居場所
でもわたしたちは、これまで積み上げてきた人間関係が崩れてしまうとそうした自信をなくしたり、自分の価値を見出せなくなったりすることがあります。そのとき再び自信を取り戻してもらうために、さまざまな支援活動が行われています。
その取り組みのひとつが、厚生労働省が全国で展開している「地域若者サポートステーション(通称サポステ)」です。そこでは、各種の資格取得講座やスキルアップのプログラムなどと同時に、自信を取り戻せるような居場所作りが行われています。
社会の変化と居場所の減少
サポステには課題も見られます。本来の目的は、就労支援に限らず会話や遊びなどの場を提供しながら、広い意味での社会への参加・社会的自立を支援することでした。しかし近年では「利用者の何人が就労に結びついたか」など数値目標が重視されるようになり、就労支援に力を注ぐ傾向が強まっています。
また、社会の変化とともに自立のハードルも上がっています。例えば第三次産業の普及で高度なコミュニケーション能力を求められるようになり、人付き合いの苦手な若者が自信を失ってしまうことが増えました。若者が再び安心感や自信を取り戻すためにも、居場所作りに重点を置いた自立支援の方法を研究する必要性が高まっています。
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東北文化学園大学 現代社会学部 現代社会学科 教授 山尾 貴則 先生
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