講義No.12177 法学

環境法という名の法律は存在しない? 現実に合わせた法で環境を守る

環境法という名の法律は存在しない? 現実に合わせた法で環境を守る

自然を守るための法律

動物や湖といった自然の保護、大気汚染をはじめとする公害への対策など、環境を守るための法律はたくさんあります。例えば、日本では過去に輸入した象牙を国内で販売することは認められていますが、海外に輸出することはできません。しかし装飾品などに使われている象牙を海外からの旅行客が購入し、こっそり持ち出す事例が相次ぎました。これは密輸出扱いとなり、本来は違法行為です。こうした状況は問題視されており、法律のさらなる厳格化が必要です。

環境法は存在しない?

環境に関する法律はたくさんありますが、実は「環境法」という名前の法律は存在しません。象牙取引規制などを定めた種の保存法、大気汚染防止法、鳥獣保護法など、環境保全のための法律をまとめて環境法と呼んでいます。環境法は1970年頃から整備が始まった、比較的新しい法分野です。環境に対する課題が明確になるにつれ、環境法の範囲は拡張してきました。また、より使いやすく効果的な内容になるよう、現実と法律のズレを埋めるための研究も行われています。

現実と法律のズレを解消する

現場の状況に合わせた法律を作るためには、環境保護を取り巻く実情を把握する必要があります。それにあわせるべく、何度も法律の改正が行われてきました。例えば、サザエやアワビなどの密漁を取り締まる漁業法では、罪に問うためには対象者が継続して密漁をしていると証明する必要があり、警察は犯人をなかなか検挙できないでいました。そのため、執行過程の実態把握を踏まえて漁業法の改正が行われ、1度でも密漁をしたことがわかれば取り締まることが可能になったのです。
もし事前に課題が見えていれば、法律を制定するときに対策を盛り込むことができます。しかしすべての出来事を予測することは不可能です。だからこそ法律が施行された後の実態を把握し、必要に応じて改正や新たな法律の提案をする研究が求められています。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 法学部 地球環境法学科 教授 北村 喜宣 先生

上智大学 法学部 地球環境法学科 教授 北村 喜宣 先生

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環境法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

知らないことを知りたい、という素朴な気持ちを持ってほしいです。すべての物事に対して「なぜそうなっているのだろう」と疑問を抱くことが大切です。大学ではそうした気持ちを追求するためのノウハウが身につきます。特に研究では勉強とは少し違い、「探求する力」を伸ばせます。私も研究でひとつの言葉の意味を解明するために、何日も図書館で調べることがよくあります。納得するまで徹底的に考える経験をしてみましょう。こだわる力や、あきらめない力は、社会に出たときに大いに役立ちます。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。