講義No.12365 法学

差別をなくすためにできることは? 各国の事例から探る!

差別をなくすためにできることは? 各国の事例から探る!

理念や法だけでは不十分

「人種や性などによる差別はしてはならない」と、多くの人が考えています。しかし、理念を法に書くだけでは、現実の差別をなくすことはできません。理念を掲げると同時に、具体的に差別をなくすための制度を整えたり、社会・個人の意識を変えたりという取り組みが必要です。例えば女性差別の問題で考えてみましょう。日本には性による差別を禁止する法律がありますが、進学や就職、結婚などで未だに女性が不利な立場に置かれることが少なくありません。では、法律は差別をなくすために何ができるのでしょうか?

教育や啓発で人々や社会の意識を変える

女性がDV(家庭内暴力)を受けた場合も、単なる家庭内のもめごととして処理されたり、男性への処分が甘かったりと、女性は人権を侵害されているのにまともにとり合われない状況があります。一方、海外では、男尊女卑的な意識が法律の執行を妨げないよう、警察や裁判所など法の執行に関わる人に対し、ジェンダーの認識を持たせる教育や啓発を行っていたりします。
また、日本では政治家や企業の役員の多くを男性が占めており、それが男性に有利な環境をつくり出しています。このような状況を変えるため、女性の政治家や役員を増やそうという目標が掲げられていますが、未だに国会議員の女性候補者は全体の1〜3割程度にとどまっています。一方、フランスでは議会の候補者の半分を女性にするという法律が作られ、従わないと罰金を課されるようになりました。その結果、女性の議員が4割まで増える結果になりました。

自分の国の法律や制度を問い直す

ただし、こうした女性枠を確保する制度は不満を招くこともあるため、導入にはコンセンサス(同意)を得る必要があります。このように差別の解消は簡単ではありませんが、国際的な動向を知ると、自分の国だけを見ていては気づかないことに気づけます。国際人権法の研究では、国際社会の流れや他国の事例を見て「自国で法律は適切に執行されているのか」「もっとやるべきことはないのか」を探るのが大切です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 法学部 法学科 教授 渡辺 豊 先生

新潟大学 法学部 法学科 教授 渡辺 豊 先生

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法学、国際関係学

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メッセージ

国際社会に関心がある人は、普段からさまざまなジャンルの本を読んだりニュースを見たりして、視野を広げることが大切です。その上で国際社会を法律・政治・経済・特定の地域など、どんな観点から見たいのか、自分の興味の対象を見極めてみましょう。もし法律の視点から国際社会を見てみたいなら、法学部に来て、国際法を一緒に学びましょう。国際法では戦争や宇宙開発をはじめ、国際社会に関わるいろいろな問題を法的な観点で見ることができ、その対象分野の広さが大きな魅力だと思います。

先生への質問

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新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。