差別をなくすためにできることは? 各国の事例から探る!
理念や法だけでは不十分
「人種や性などによる差別はしてはならない」と、多くの人が考えています。しかし、理念を法に書くだけでは、現実の差別をなくすことはできません。理念を掲げると同時に、具体的に差別をなくすための制度を整えたり、社会・個人の意識を変えたりという取り組みが必要です。例えば女性差別の問題で考えてみましょう。日本には性による差別を禁止する法律がありますが、進学や就職、結婚などで未だに女性が不利な立場に置かれることが少なくありません。では、法律は差別をなくすために何ができるのでしょうか?
教育や啓発で人々や社会の意識を変える
女性がDV(家庭内暴力)を受けた場合も、単なる家庭内のもめごととして処理されたり、男性への処分が甘かったりと、女性は人権を侵害されているのにまともにとり合われない状況があります。一方、海外では、男尊女卑的な意識が法律の執行を妨げないよう、警察や裁判所など法の執行に関わる人に対し、ジェンダーの認識を持たせる教育や啓発を行っていたりします。
また、日本では政治家や企業の役員の多くを男性が占めており、それが男性に有利な環境をつくり出しています。このような状況を変えるため、女性の政治家や役員を増やそうという目標が掲げられていますが、未だに国会議員の女性候補者は全体の1〜3割程度にとどまっています。一方、フランスでは議会の候補者の半分を女性にするという法律が作られ、従わないと罰金を課されるようになりました。その結果、女性の議員が4割まで増える結果になりました。
自分の国の法律や制度を問い直す
ただし、こうした女性枠を確保する制度は不満を招くこともあるため、導入にはコンセンサス(同意)を得る必要があります。このように差別の解消は簡単ではありませんが、国際的な動向を知ると、自分の国だけを見ていては気づかないことに気づけます。国際人権法の研究では、国際社会の流れや他国の事例を見て「自国で法律は適切に執行されているのか」「もっとやるべきことはないのか」を探るのが大切です。
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新潟大学 法学部 法学科 教授 渡辺 豊 先生
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