日本の梨を救え! 地球温暖化で激変している栽培環境
果樹栽培は気軽に耕作地を変えられない
近年、「地球温暖化」という言葉は毎年のように話題になっています。環境変動は、耕作地の移動が難しい果樹栽培にとって特に影響が大きいと言えるでしょう。例えば、稲だと1年で刈り取って翌年は新たな苗を植えますが、鳥取県の名産品のひとつである梨は、ずっと同じ木から収穫します。
梨は、桜などと同じく春に開花します。温暖化が進むと開花が早まるだけかと思えば、問題はそう単純ではありません。梨は冬眠状態のとき、一定の低温状態をためこむことで、春になるとうまく冬眠を解除するという仕組みになっています。これを「自発休眠」と呼びます。ところが、暖冬で低温を蓄積していないため、春になっても花が咲かないという現象が、九州などですでに起きています。
栽培学は「実学」
栽培学は、生産現場と協力しながら研究を進める学問分野です。果樹栽培の場合、温暖化で気候が変わったからといって、気軽に作物を変えることはできないため、農家の人たちは何年も先を予想しながら、日々、栽培物の世話をしています。従来、梨は東北から九州まで広い地域で栽培されてきました。しかし、温暖化の影響で品種予想が困難になり、このままでは日本全体が梨の栽培に適さなくなる事態も考えられます。つまり、これからの農業には、おいしさだけでなく激しい環境変化にも適した品種の開発が求められているのです。
おいしさと環境耐性を両立した新品種を創る
こうした問題を解決するひとつの方法は育種です。台湾などの、より暑い気候で栽培される品種とうまくかけ合わせることによる、「少ない低温」と「おいしさ」を両立した種の開発が行われています。ほかには、休眠を人為的に解除させる薬剤の利用方法の検討なども行われています。
また、果樹栽培の難しさは、種から成木になるまで何年もかかってしまうことです。場所も取りますから、比較検討が容易ではありません。そこでDNAマーカーという技術を使い、小さいうちからよりよい木を選抜する、ということも行われているのです。
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鳥取大学 農学部 生命環境農学科 植物菌類生産科学コース 准教授 竹村 圭弘 先生
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