「チャリティー」の本来の意味は? キリスト教の教義を考える

「チャリティー」の本来の意味は? キリスト教の教義を考える

チャリティーとキリスト教

チャリティー活動というと、無料のコンサートやバザーなどを思い浮かべるでしょう。しかしチャリティーは「無料」という意味ではありません。本来は「愛徳」という意味で、キリスト教の根本的な教えです。相手に幸せになってほしいという気持ちから自分の身をささげることを、キリスト教では「愛」と考えています。ボランティアなど人を助けるすべての活動は愛の奉仕であり、チャリティーなのです。

優しさで世界を変える

第266代ローマ教皇のフランシスコは「優しさの革命」について説きました。世界を変えるのは暴力ではなく、優しさや愛だと考えたのです。優しさの革命を実現しようとしたキリスト教徒はたくさんいます。例えば第二次世界大戦の頃、ナチスドイツによってユダヤ人など社会的マイノリティーに属する人々が虐殺されたときは、多くのキリスト教神学者が反対の声を上げました。キリスト教では、弱い立場の人こそ愛され大切にされるべきだ、と説いているからです。また、マザーテレサのように、貧困や病に苦しむ人々に奉仕した人物もいました。このようにイエスが教えた愛の奉仕を生きた聖人たちは、今もキリスト教の模範となっています。

平和のヒントを探る

聖書は教会の中で大切に伝えられ、深められ、そして聖人たちが目に見えるかたちでその言葉を生きてきました。そのようなキリスト教の教えを研究する分野が教義神学です。さらに、教義を現代社会の状況に当てはめて考えると、平和な世界を築くためのヒントが得られます。
例えばキリスト教の教えでは、神は「人々が互いに愛し合ってひとつの共同体になること」を望んでいると考えられています。しかし教会では過去に対立が生じ、現代もカトリックやプロテスタントなどの教派に分裂しています。再び一致して幸せを実現するための方法を探ろうと、改めて教義をひもといたり、愛の奉仕について考えたりする研究が行われています。もし一致のための方法がわかれば、キリスト教のみならず世界全体が団結して平和を実現できるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 神学部 神学科 講師 増田 健 先生

上智大学 神学部 神学科 講師 増田 健 先生

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神学

メッセージ

英語にvocationという言葉があり、「天職」と訳されますが、語源は「呼ばれる」という意味のラテン語です。人は大切な存在として神に呼ばれて、使命を持って世界に生まれてくると、キリスト教では考えています。その使命とは、自分や誰かを幸せにする、ということでしょう。だからこそ自分だけではなく、さまざまな人と一緒に幸せになる方法を探し求め、希望に満ちた社会を夢見て行動してほしいです。どのようなかたちで幸せを実現したらいいか、何を学べばいいかを、神学を勉強しながら共に考えていきましょう。

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。