女性の体を生涯にわたって見守る「ホルモン」を大切に
適切な看護は自分の体をよく知ることから
現代の看護の役割は、病気の予防や健康増進のための保健指導などにも及んでいます。適切な看護的支援を行うには、看護師自身が自分の体の仕組みについて高い意識を持つことが重要です。例えば、女性の体は生涯、ホルモンによって緻密にコントロールされています。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモンがあります。エストロゲンは生理や女性らしい体作りに深く関わっており、プロゲステロンは子宮内膜に働きかけ、受精卵が着床できるように妊娠への準備をします。
女性にとって大切なホルモンバランス
脳の視床下部は、一定の周期でエストロゲンとプロゲステロンの分泌量を増減させてホルモンバランスを保ち、生理を規則正しくコントロールしています。この視床下部は、体のさまざまな調子を自動制御する自律神経の司令塔でもあるため、さまざまな要因で自律神経が乱れると、ホルモンバランスも乱れてしまいます。近年、若い女性の無理なダイエットや不規則な生活習慣がホルモンバランスを乱し、生理不順や無月経を引き起こしていることが問題視されています。
ライフスタイルがホルモンに与える影響
通常、エストロゲンは妊娠・出産期を経て40代前半ごろまで活発に分泌されます。しかし、40歳後半から減少し始め、閉経となる50歳前後にかけてホルモンバランスは崩れ、さまざまな体の不調が起こる「更年期」を迎えます。分泌が止まる老年期には、骨がもろくなる骨粗しょう症や脂質異常症にかかりやすくなります。
更年期以降のこうした症状の緩和には、エストロゲンを補充するホルモン療法が効果的ですが、若い女性のホルモンバランスの乱れは妊娠・出産だけでなく、老年期までの健康に影響を及ぼす懸念があります。男女を問わず看護師は、女性ならではの体のメカニズムをきちんと理解し、健康を守るための正しい知識を伝える姿勢が求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 保健学科 看護学専攻 教授 安井 敏之 先生
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