講義No.12217 外国語学

ロシアのリンゴは数により形が変わる?

ロシアのリンゴは数により形が変わる?

日本語との意外な共通点

日本語とロシア語と英語とを比べると、ロシア語と英語が近く、日本語は遠いという印象を持つことでしょう。しかし日本語とロシア語で似たところもあり、例えば「私には兄がいます」という表現を英語にするとI have a brotherとなり、「have=持っている」という動詞を使いますが、ロシア語は日本語と同様に「兄がいる」と表現して、存在のbe動詞を使います。また寒さを表現するとき、英語はit is coldのように仮主語itを使いますが、ロシア語は日本語と同様「寒い」という一言で文が完成します。かけ離れた言語に感じる日本語とロシア語にも共通点があるのです。

数詞を使うと独特な変化が

ロシア語で特徴的なのが、数詞を使うときです。例えば「リンゴが5個あります」と表現すると、リンゴが複数形になるだけでなく、「~の」という形になります。英語で無理やり置き換えると、「five of apples」といった具合です。ofのような助詞こそ使いませんが、リンゴの語尾が「~の」を意味する形に変わるのです。また物が1個の場合と2から4個の場合、5個以上ある場合で語尾が変化します。これはロシア語だけでなくポーランド語やチェコ語など、多くのスラヴ系言語に共通する現象です。

言語の背景には文化がある

語学を学ぶとき、意識して欲しいのが「レアリア」と呼ばれる言語外の背景知識です。先ほどのリンゴを例にすると、ロシアで一般的に食べられているリンゴは日本の物より小さいのです。従って日本語で「私はリンゴを5個食べました」と言うと驚かれますが、ロシアでは5個食べる人も珍しくありません。食べ方も違い、そのまま丸かじりする人が多いです。また、日本人はリンゴ=赤いと思い込みがちですが、ロシア語で「リンゴ」を画像検索すると青リンゴの画像もかなり表示されます。そういった知識や文化、人びとの共通認識を踏まえないと、その言語の本当に意味するところは理解できないのです。

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上智大学 外国語学部 ロシア語学科 教授 秋山 真一 先生

上智大学 外国語学部 ロシア語学科 教授 秋山 真一 先生

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ロシア語学、言語学

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メッセージ

自分が何かに興味を持ったら、自分で調べる癖を身に付けてください。図書館で本を借りたり、新聞を読み込んでみたりと、方法は何でも結構です。義務感のある学習は苦痛に感じることもありますが、自ら調べる学習は何の苦もなく、むしろ満足感があります。もし答えが見つからなくても諦めず、心の片隅に保管しておきましょう。後になり別のことを学んだときにつながってわかるかもしれませんし、そのことの本当の面白さに気づくきっかけになる可能性もあります。

先生への質問

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上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。