ハリーポッターの呪文にも実は深い意味がある!?
定番の呪文はわかりやすさが命
呪文と聞くと意味不明な言葉というイメージがありますが、実は大別すると2つのルールがあるのです。1つは定番の呪文です。例えば「アブラカダブラ」などは、誰もが呪文だと認識しています。ですから、「アブラカダブラ」の後ろに「◯◯になれ」と続ければ、子どもにも◯◯になるための呪文だと理解できます。
難解な呪文の裏に隠された作者の意図とは?
もう1つは言葉に意図がある呪文です。ハリーポッターに「ペトリフィカス・トタルス」と言う全身を硬直させる呪文が登場します。一見何の呪文か意味不明ですが、「カス」「ルス」という響きはラテン語に似ており、古くて高尚なイメージがあり呪文の言葉向きです。さらに、「ペトリフィカス」は英語の「petrification(石化)」「petrify(石化する・硬直する)」、「トタルス」は「total(全体の)」に由来するので、英語がわかる人には「あぁ、全身を硬直させる呪文だ」と理解できるのです。同じ呪文でも「ドラゴンクエスト」に出てくる呪文は、また少し違ってきます。初代ドラクエが登場した頃は、ファミコンのメモリ数に制約があったため呪文は短く、わかりやすいことが条件でした。そこで「オノマトペ(擬音・擬態語)」が使われていました。「ヒヤッとする」と言う擬音から、攻撃の呪文「ヒャド」が生まれ、「ヒャダルコ」「ヒャダイン」と言葉が長くなれば長くなるほど強くなるように変化させることで、難解さを残しながらも使いやすい呪文が完成しました。呪文には作者の意図があり、それが読めると物語がさらに面白くなるはずです。
言葉は人間を映す鏡
目が退化し、鼻が大きく、皮膚が分厚いなど、モグラの特徴的な形体は、穴の中で暮らすのにふさわしいものです。同じように言葉も使う場所にふさわしい形があり、そこには言葉を使う人の意図が見え隠れするはずです。つまり、言葉とは単なるコミュニケーションツールとしてあるのではなく、私たち自身を映す鏡なのです。それを探るのが、言語学の醍醐味です。
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神戸市外国語大学 外国語学部 英米学科 教授 山口 治彦 先生
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