講義No.12232 言語学

コミュニケーションを主体とした英語教育のために

コミュニケーションを主体とした英語教育のために

言語習得の共通点

子どもがコミュニケーションの中で自然と学んでいく最初の言語を母語といいます。一方、あとから習得する別の言語は第二言語と呼ばれています。一般世間では、母語習得と第二言語習得の違いばかりに注目することが多いですが、研究で調べてみると、実は類似点も多く、言葉を学ぶうえでの普遍性があることがわかってきています。

母語話者の子どもと似た間違いも?

第二言語学習者が母語習得中の子どもとよく似た間違いをすることがあります。YesかNoで答えられる英語の疑問文を作る際、正しい文法ではdoやbe動詞が先頭にきます。しかし母語習得中の子どもを観察してみると、“Hungry?”のように語尾を上げるだけで疑問を表す場面が多く見られます。“You from Japan?”のようにbe動詞を抜いてしまう場合もあります。このような文は、英語を第二言語として学んでいる人にもよく見られます。いくら文法の知識が豊富でも、実際のコミュニケーションでは学んだことを中々うまく使えないことは珍しくありません。つまり、文法説明能力と言語使用能力は別物だと考えられます。

日本の英語教育に必要なこと

言葉を使う能力を伸ばすためには、4技能にわたってコミュニケーションの場を増やすことが重要です。しかし日本の英語教育では文法や単語練習ばかりに時間を使い、付け足しとしてコミュニケーションを扱うことがまだ多いようです。そのためコミュニケーションの時間が短くなっている点が大きな課題です。
海外の英語教育に目を向けると、授業全体にわたってコミュニケーションを中心に据えることが増えてきています。教師は生徒が興味を持てるような内容を英語で語りかけ、生徒が内容理解や発言で困ったときに必要な文法などを教えるのです。日本でもこういった教え方は広まりつつありますが、従来の教え方をする教師との温度差はまだ多く見られます。教員養成などを通して、そういった英語教育の現場を改善する方法を考えることも、応用言語学研究に期待される点のひとつです。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 外国語学部 英語学科 教授 和泉 伸一 先生

上智大学 外国語学部 英語学科 教授 和泉 伸一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

応用言語学、第二言語習得研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

“Action is the foundational key to all success.”というピカソの名言をあなたに送ります。「行動に移して初めて物事を成し遂げられる」という意味です。当たり前のようですが、実行するのは難しいものです。しかし最初から諦めてしまえば、将来にはつながっていきません。まず試してみて、何か手応えがあれば挑戦した自分自身をほめることができ、自信にもつながるはずです。周囲に流されず、あなた自身の興味に一歩踏み出せば、きっと成功に近づくでしょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。