コミュニケーションを主体とした英語教育のために
言語習得の共通点
子どもがコミュニケーションの中で自然と学んでいく最初の言語を母語といいます。一方、あとから習得する別の言語は第二言語と呼ばれています。一般世間では、母語習得と第二言語習得の違いばかりに注目することが多いですが、研究で調べてみると、実は類似点も多く、言葉を学ぶうえでの普遍性があることがわかってきています。
母語話者の子どもと似た間違いも?
第二言語学習者が母語習得中の子どもとよく似た間違いをすることがあります。YesかNoで答えられる英語の疑問文を作る際、正しい文法ではdoやbe動詞が先頭にきます。しかし母語習得中の子どもを観察してみると、“Hungry?”のように語尾を上げるだけで疑問を表す場面が多く見られます。“You from Japan?”のようにbe動詞を抜いてしまう場合もあります。このような文は、英語を第二言語として学んでいる人にもよく見られます。いくら文法の知識が豊富でも、実際のコミュニケーションでは学んだことを中々うまく使えないことは珍しくありません。つまり、文法説明能力と言語使用能力は別物だと考えられます。
日本の英語教育に必要なこと
言葉を使う能力を伸ばすためには、4技能にわたってコミュニケーションの場を増やすことが重要です。しかし日本の英語教育では文法や単語練習ばかりに時間を使い、付け足しとしてコミュニケーションを扱うことがまだ多いようです。そのためコミュニケーションの時間が短くなっている点が大きな課題です。
海外の英語教育に目を向けると、授業全体にわたってコミュニケーションを中心に据えることが増えてきています。教師は生徒が興味を持てるような内容を英語で語りかけ、生徒が内容理解や発言で困ったときに必要な文法などを教えるのです。日本でもこういった教え方は広まりつつありますが、従来の教え方をする教師との温度差はまだ多く見られます。教員養成などを通して、そういった英語教育の現場を改善する方法を考えることも、応用言語学研究に期待される点のひとつです。
参考資料
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上智大学 外国語学部 英語学科 教授 和泉 伸一 先生
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