情報技術と社会が生み出す難題「ELSI」に挑む!
狼は悪者なのか?
デジタル化が進んだ現代の社会では、データを活用して社会を動かそうとしています。データを活用すると確かに便利ですが、一方でさまざまな問題が生じます。その1つが「バイアス(偏り)」です。人間が物事を公平に見ることはほぼ不可能で、どうしても偏った見方をしてしまいます。例えば、童話などの影響もあって、私たちは「狼(オオカミ)」に「悪者」というイメージを抱きがちです。何かの情報に触れた時、本当にこの意見だけでいいのかと、別の意見と比較することも大切なのです。
世の中には倫理的・法的・社会的課題がいっぱい
また、人間だけではなく、人工知能(AI)にもバイアスが見られがちです。大量の情報をもとに学習する際に、偏った情報も含まれていることもあるため、その影響を0にすることは容易ではありません。また、そのバイアスをなくそうと操作することは、データを改ざんすることにならないかという問題もあります。
医療分野では、体細胞などを使って同じ遺伝子を持つ個体を作るクローン技術がありますが、生命の尊厳を脅かすことになると法規制されました。そんなことから近年は、各分野の技術が進化する上で生じる問題、つまり「ELSI(Ethical Legal and Social Issues):倫理的・法的・社会的課題」を多角的に考え、解決しようとする研究が増えています。
技術と社会のバランスをめざす
例えば、自動運転中のクルマが事故を起こした時、誰が責任を取るかを扱った判例はまだありません。技術は社会を動かすアクセルで、技術と共に社会も進化しますが、それを規制する法や制度が追いついていないのです。では、制度化されるまでは何で補うかといえば、「倫理」だと考えられています。倫理は法ではありませんが、みんなが「なんとなくこうしたほうがいいよね」と思う概念のようなものです。複雑な問題を解決するために、倫理・法律・経済・技術・心理など各分野の研究者や専門家が議論して、バランスのよい社会をめざそうとしています。
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神戸学院大学 経営学部 経営学科 教授 小川 賢 先生
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