データだけでなく制度や議論を追うことで、政策を正しく評価する
小泉政権の地方財政改革
日本が長引く不況にあえいでいた2001年、小泉内閣が発足しました。「構造改革なくして景気回復なし」という言葉通り、小泉内閣は郵政民営化や不良債権処理などと並んで、地方財政改革も推し進めていきました。地方財政改革の目的は、国と地方を合わせた財政健全化にありました。日本にはたくさんの地方自治体が存在します。それらの財源を調整する制度に、地方交付税制度があります。小泉内閣は、その地方交付税制度の改革を特に推し進めました。その結果、財政状況の改善は図れましたが、地方自治体間の財政格差が拡大しました。
定量分析と定性分析とで相互に補完する
政策をとりまとめる現場では、不況にあえぐ日本経済を立ち直らせるべく、夜を徹した議論も行われました。その議論から導き出された答えが必ずしも正しかったとは言い切れません。その中に、地方交付税制度が国と地方の財政悪化の根源になっているとの議論が見られました。地方交付税制度が改革の中心に置かれたのには、多くの定量分析によりその地方交付税制度が非効率をもたらすという指摘がなされたことがあります。定量分析には、示された結果から制度の課題を見つけ出すという重要な意味があります。
制度と議論を丹念に追う
定量分析を用いて制度の課題や政策の成果を評価していくという研究の視点も大切であることは間違いありません。ただし、データにはその制度の意義や制度形成の背景は現れません。その現れない部分は残された記録を追って明らかにしていく必要があります。そうすると、その制度の重要性、また変えるべきではない部分を明らかにすることができます。データだけでは制度や改革を正しく評価できないこともあります。データには現れない部分を重んじ、それらを丹念に追うことは制度を正しく評価する上で大切なことです。また、その作業から制度の理解がさらに深まり、制度形成にたずさわった者の思いを知れるという面白さもあります。
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