鉄とコンクリートから木材へ 世界で進む大型の木造建築
木でビルをつくる
木造建築というと一般的には戸建住宅がイメージされますが、近年ビルなどの大型の建物を木で作ろうという動きが世界のトレンドです。背景にあるのは気候変動の要因である二酸化炭素や環境負荷の低減です。木は空気中の二酸化炭素を取り込んで酸素に変える性質をもっています。建物の素材を鉄やコンクリートから木へと変えることで、二酸化炭素削減が期待できます。また、木は火災や地震に弱いとされてきましたが、近年では木の表面に不燃処理を施したり、燃えない素材でくるんだりといった技術が広がっています。フィンランドやオーストリアといった環境意識の高い国々では、大型の木造建築がブームになっています。
火事と地震を克服して木の可能性を追求する
日本では、大火事や大地震の被害に度々見舞われたことから、木造の大型建築は法律で禁止されてきた歴史があります。現在の法律でもさまざまな制限が掛けられており、木造ビルを普及させるには技術的な課題と共に法的な問題をクリアしなければなりません。ヨーロッパでも20年前に同様の問題がありましたが、徐々に法律が合理化されてきました。日本も歴史的に社寺仏閣などで木造建築の技術が発達してきました。今は活用できる森林も多いため、法律がクリアになれば木造の大型建築が発展する可能性が高いです。
都市部に木の街並みをつくる
日本の木造ビルの歴史はまだ5~10年程度です。研究の積み重ねや実績も少ないため、その分建築コストが高くなる傾向にあります。現在は、例えば金具などを用いた木と木の接合技術や、模型などを用いた耐震・強度の実験、あるいはヨーロッパでつくられている木造ビルの事例を参考にしたデザイン研究などが行われています。こうした技術開発と同時に、日本では大手建設会社を中心に大型の木造ビルが実現しています。しかし世の中のビルの大半が5階建て以下であることを考えれば、中小規模のビルを積極的に木造化し、都市部に木の街並みを実現することで、都市環境を改善しつつ環境への負担を減らすことができます。
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日本福祉大学 健康科学部 福祉工学科 准教授 坂口 大史 先生
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