日本の「オールドニュータウン問題」について考える
日本のニュータウン
「ニュータウン」と呼ばれる地域が全国にあります。ニュータウンは、大都市圏郊外の広いエリアに、新築の住宅や店舗、道路も含めて新たにつくり出された市街地です。発祥は産業革命後のイギリスとされており、日本では第二次世界大戦後の高度経済成長期を境に、主要都市圏郊外につくられました。その目的は、製造業を中心とした産業が集まる都市圏に、労働力として集まってきた人々に良好な住宅を供給することでした。当時の一般的な住宅に比べてスペックが高く、道路も整備されており、さらに豊かな公園や緑地に囲まれたニュータウンは大変な人気を集めました。
オールドニュータウン問題
しかし、年月の経過に伴って、住民の高齢化、施設の老朽化が進み、多くのニュータウンは徐々ににぎわいを失っています。新たに転入する若い世帯は少なく、子育てを終えた後に長く暮らし続ける人が中心になったニュータウンでは、ほかの地域に比べて人口減少・高齢化が進みました。近年では孤独死や空き家、施設の老朽化といった問題が深刻化しており、「オールドニュータウンの再生」は多くの地域の喫緊の課題となっています。「オールドニュータウンの再生」をめざして、高齢者の居場所づくりや、子育て世帯向けのリノベーションといった取り組みがいくつかのオールドニュータウンでは行われています。しかし、こうした個別の取り組みだけではもはや問題の本質的な解決は難しいと言えます。
「街づくり」が果たすべき役割
社会の成熟とともににぎわいを失ったニュータウンを再生するには、今の社会におけるニュータウンの位置づけを捉える大きな視点を持ち、行政や地域住民を巻き込んだより総合的なアプローチが不可欠です。建国以来初めてとなる人口減少時代を迎えた現在、ニュータウンを含む「まちづくり」もかつてない局面を迎えています。従来のようにどんな建物や街をつくるのか、といった視点だけでなく、「つくった街をいかに維持・活用し、次の世代に伝えるのか」といった視点が問われているのです。
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