手術を受けるがん患者の心理の特徴を探る
患者のメンタルケアの重要性
胃がんの手術には、3週間から1カ月ほどの入院期間が必要とされていました。しかし、医療技術の進歩などにより入院期間が短縮され、10日以内で退院することも珍しくありません。入院期間が短くなったために見落とされがちなのが、患者の心理です。患者が不安を抱えたまま退院しないようにするには、看護師たちが患者のメンタルをきちんと把握して適切にケアしなければなりません。そこで手術前後のがん患者と看護師の会話を手がかりに、患者が持つ心理の特徴が分析されています。
手術前のがん患者は病名を言わない?
調査結果から、手術前の患者はあまり「がん」という単語を使わないことがわかってきました。代わりに「悪いもの」「腫よう」のような別の言葉で表現する人も多いです。一方、手術後に回復してくると、「がん」という言葉を口にする傾向が見られます。「自分はがんだった」と周囲に話すようになるのです。これは、その後の治療とも関係しています。がんは治ったとしても、再発や転移の可能性があります。そのため退院前に、医師から「今後も追加治療が必要かもしれない」、という説明を受ける患者もいます。すると患者は「自分はまだがんから逃れられないのだ」と実感し、現実を受け入れようとするのです。
言葉の使い方とストレス
患者の言葉の使い分けは、ストレスを軽減しようとする行動の一種だと推測されます。ストレスになるから、がんであることを思い出したくない、体調が回復する見込みの高い手術に集中したい、などの気持ちから、特に術前は「がん」という表現を避けがちになるのです。
調査でわかった結果は、がん患者のメンタルケアに応用できると期待されています。ストレスに関する理論を使って患者の言動を分析したり、看護師が患者によりよいケアを提供したりする方法を考えるヒントになるからです。ただし、患者の状態には個人差があります。調査結果を土台にした上で、目の前の患者にしっかりと向き合うことが求められています。
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