プラスチックはどう劣化するの? 高分子材料の耐性を知る
プラスチックは未解明な素材
高分子材料であるプラスチックが世の中に登場してから、およそ70年になります。金属やガラスなどの無機材料と比べて研究の歴史が浅く、その性質についてわかっていないことがまだ多くあります。金属の劣化は、亀裂やサビなど見た目でわかりやすいものです。しかしプラスチックは、黄ばみなど目に見える化学的劣化とは別に、異常がないのに突然折れてしまうといった物理的劣化があります。この劣化や耐性の基準となる値を正しく見定めることは、高分子材料の安全性と今後の活用の幅を広げるためにも必要です。
材料内の分子の動きを観測する
高分子材料に力をかけたときの分子の動きを観測するには、「レオ・オプティクス測定」という技術を用います。これにより、力をかけた際に材料内部で分子が動いている様子が見え、動きの速さが与える力や材料の構造によって違ってくることもわかります。これまで物理劣化は物質の酸化などで脆くなるイメージがありましたが、高分子材料の場合は必ずしもそうではありません。材料が成形されたあとも分子が動き続け、だんだんと動かなくなることで材料自体の硬度が増していった結果、弾性が失われて割れやすくなるのです。さらに、この破壊のタイミングもランダムに発生するのではなく、引っ張る力が蓄積されてある境界を超えると一定の確率で割れてしまうこともわかってきました。
より優れた代替品を作り出すために
現在、さまざまな高分子材料が分析され、それぞれの劣化や耐性の基準値が明らかになりつつあります。この基準値さえ定まれば、例えば2倍の強度を持つ構造にすることで、原材料を半分にすることも可能になります。
プラスチックは石油を原材料としているため、環境面から負のイメージがありますが、もともと石油は地球が植物などを浄化したものであることを考えると、筋の良い物質です。正しい耐性や劣化の基準を定めることで原材料の有効利用にもつながり、プラスチックの有効利用は、資源の持続可能性にも役立つ重要な機転となるのです。
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金沢大学 理工学域 フロンティア工学類 教授 新田 晃平 先生
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