においの分析が「スマート農業」の未来を切り開く
どんな作物にもにおいはある
農業や畜産業の分野で、「におい」の分析を生産向上に役立てようという研究が行われています。どんな農作物も特有のにおいを持っています。しかもそのにおいは、病気や成熟度など、植物や動物の「体調」によって変化します。こうしたにおいを分析することで、農作物や畜産動物の生育状態を管理しようという試みです。
実は農業や畜産業において、においによる判断自体は古くから行われてきました。しかしそれは、長年の経験に基づくもので、個人的な感覚や技能に負うところの大きいものでした。
誰にでもできるスマート農業をめざして
現在、農業従事者の高齢化や人手不足が深刻化していく中で、負担の少ない農作業を可能にする「スマート農業」への転換が進められ、関連した研究も盛んに行われています。これまでベテランが経験と勘で判断してきたようなことを数値化して、離れた場所からでも農地を管理できるようなシステム、それが「スマート農業」の基本的な考え方です。それには、ベテランの技術を科学的に分析して、経験の浅い人間でも判断できるような仕組みが必要となります。実際にAIによる画像解析技術などは、かなりの精度で作物の状態を把握できるようになってきています。
においは最後のフロンティア
人間の視覚、聴覚、触覚、味覚を科学的に再現することはある程度可能となっていますが、嗅覚だけは、完全に機械化することができないと言われています。濃度が低いために、人間が感じとれるにおいも分析機器だと検出できない場合があります。また、単一の物質でなく、数十から数百という化学物質の混合によって生じるにおいが多く、一つの物質を検出しただけではわからないという問題もあります。
研究の中で、人間の嗅覚と化学分析を併用した「におい物質同定システム」が開発されていますが、この研究が進み、においの「見える化」が進むことによって、スマート農業もより高度化できるようになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 農学部 生物資源科学科 食資源環境科学コース 准教授 上野 大介 先生
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