見えなかったものが見える! 新開発CT装置が秘める可能性とは

見えなかったものが見える! 新開発CT装置が秘める可能性とは

精密さが5倍アップしたCT装置の開発

今や診断や治療において、コンピュータ断層撮影装置を使うCT検査は重要な役割を果たしています。この検査は、X線によって人体の輪切りのような断面画像を撮影し、それをつないで立体的な画像を得ます。CTはX線管がX線を出して検出器で読み取り、プログラムによって画像を処理します。これを精密な撮影に対応できるよう調整することで実現しています。これまで、輪切り画像の間隔は0.5~1ミリでしたが、それをミクロ単位(0.1ミリ以下)にまで精度を5倍以上あげた機器が開発されました。現在は実証段階にあり、臨床現場で使用して検証していきます。

これまでにない正確な画像から診断

今までは、見えない部分は、知識や経験によって予測して治療を行っていました。しかし、この新しいCT装置では、骨の中の血管や、軟部組織など、これまで見えなかったものが見えるようになります。細部まで見えて正確な状態がわかれば、より早く正確な診断ができ、治療も変わってくるでしょう。手だけ、足だけ、指1本だけの撮影も可能ですので必要部分だけに絞ることができ、X線の被ばく量は僅かです。

求められる現場のニーズに応える装置の開発

現在、次々と放射線を使う新しい機器が開発されています。これらを操作するのは診療放射線技師です。臨床現場では、使いやすく、欲しい画像が得られる機器が求められます。そのニーズを満たすには、機器やプログラムといったテクニカルな部分と、操作する技師の双方の視点が必要です。それが揃って初めて、本当に欲しい診断材料を提供できるようになります。
X線を用いるCT検査は、短時間で画像を入手でき、低コストで使いやすいというメリットがあります。より鮮明な画像処理技術を開発する、ノイズを減らす、少ない被ばく量での検査の実現など、今後も開発すべき課題はたくさんあります。それだけに、大いに進化する可能性を秘めている分野なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 医薬保健学域 保健学類 教授 市川 勝弘 先生

金沢大学 医薬保健学域 保健学類 教授 市川 勝弘 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

放射線技術科学、医用画像工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

新しい機器の技術開発というと、特別な勉強が必要だと思うかもしれませんが、基礎的な知識が非常に重要です。基礎の上に応用が成り立つからです。ただ、基礎力を身につけるのは、実は意外に難しいことです。それには、数式や方程式、理論などを、人にわかりやすく伝えられるかを試してみるといいでしょう。
高校の学習は、すべてが基礎なのでしっかり学びましょう。そして、医療や機械に興味があり、人の役に立ちたいと思うなら、ぜひ診療放射線技師を考えてみてください。奥深く、探究が尽きない分野です。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。