講義No.12307 医学

脳から精神を診るため、模索されるいろいろな方法

脳から精神を診るため、模索されるいろいろな方法

統合失調症とは?

統合失調症とは幻覚や幻聴、妄想などの症状がみられる病気です。そのため独り言をいったり、人に狙われていると周囲に訴えたりします。こうした陽性症状といわれる症状のほか、思考や意欲の欠如、引きこもりといった陰性症状があります。今は陽性症状を中心に抑える薬が多くありますが、それでも患者の多くが社会復帰に困難を感じており、その最大の原因となっているのは、認知機能障害という症状があるからです。患者には注意力や記憶力、判断力が低下する認知機能の障害が表れることが多く、いざ復職しても以前のように働けず、焦ってうまくいかないといったケースが散見されます。

注目される前頭前野

発症の原因は、脳内の神経伝達物質のアンバランスや大きなストレス、遺伝などが言われていますが、実ははっきりせず、どれも仮説の域を出ません。そのため患者の血液からゲノム情報を調べることや、脳画像の研究、また遺伝子改変マウスを使っての遺伝子の精神疾患に及ぼす影響などが研究されています。海外では患者の脳と健常者と脳の解剖による比較も行われています。そうした研究で注目される脳の部位が、理性や思考を司る前頭前野です。ここで興奮性と抑制性の神経の伝達がアンバランスになると、認知機能が低下すると考えられています。認知機能障害はあらゆる精神疾患に表れるため、前頭前野を診れば統合失調症に限らず疾患の早期発見につながるものと期待されています。

脳を診なくても診断できるか

あらゆる疾病は、治療より先にまず予防であり、精神疾患も同じです。前頭前野が早期発見のカギになる以外にも、脳で起こる変化を身体の他の部位で捉える研究も盛んです。例えば腸とうつ病の関係、あるいは心筋梗塞とうつ病の関係など、末梢の病気と脳の病気は密接にリンクしているといわれています。例えば腸内環境が良ければ気持ちが晴れる場合、腸内環境の変化で疾患の変化が診断できる可能性もあります。このように直接脳にアプローチする以外にも、さまざまな診断方法が模索されているのです。

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先生情報 / 大学情報

和歌山県立医科大学 医学部 医学科 神経精神医学講座 教授 紀本 創兵 先生

和歌山県立医科大学 医学部 医学科 神経精神医学講座 教授 紀本 創兵 先生

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精神医学

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メッセージ

楽しいことがある反面で、つらいことや苦しいこと、あるいはつまらないと思うこともあるでしょう。ですが、そこで投げ出してはいけません。自分に足りないものは何か、自分は何がしたいのか、どうすれば伸びることができるかと、自らを客観的に見つめて考え、行動するよう心がけてみましょう。そんなあなたを引き上げ、伸ばしてくれるのは、いろいろな人との出会いです。どうか一つ一つの出会いを大切にして頑張ってみてください。そうすれば、あなたのやりたいことや掲げる目標は、きっと達成できるはずです。

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本学は、和歌山県唯一の公立大学で、医学部、保健看護学部、薬学部の3学部を擁する医療系総合大学です。各学部での専門教育に加え、学部の垣根を越えたケアマインド教育等を実施し、高度医療人の育成に力を注いでいます。
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