社会的認知とリハビリテーション
他人の気持ちがわからなくなる
私たちは常に身の回りの状況を認識しながら生活しています。学術的には「社会的認知」と呼ばれ、状況を把握する「状況認知」と相手の気持ちを察する「感情認知」の2つに分かれます。この社会的認知が欠如して周囲とトラブルになってしまう人の中には、自閉症、アスペルガー症候群、うつ、統合失調症などを抱える人も含まれます。脳機能が部分的に通常と異なる働きをするため、他人の複雑な表情の変化などを読み取れなくなるのです。特に統合失調症では、社会的認知によるトラブルでストレス状況となり、幻覚妄想という形であらわれて病状をさらに悪化させてしまう場合があります。
集団で行うSST
統合失調症などの精神疾患を抱えた人に向けて心身の機能回復をはかるリハビリテーションのひとつに、集団作業療法があります。疾患を抱えた人同士で集まり、例えば「Aという申し出を受けたとして、これを断りたいと思ったあなたはどう言えばいいでしょう」とたずねます。第一の目的はそうした状況に慣れることです。次にどういう言動が適当なのか行動を選択します。こうした訓練をSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)と呼びます。ほかにも、同じ人のさまざまな表情や視線を並べた写真を見て、喜怒哀楽などの感情を読み取る訓練もします。
経験から学ぶ機会を作る作業療法
なぜこれを集団で行うかというと、他人の行動を見て「みんなはそうするのか」とか「こうするとうまくいきそうだ」「人によって考え方は違うんだ」などと客観的にとらえられるからです。例えば、「公園で鳩に餌をやる人がいます。どう思いますか?」と聞きます。すると社会的認知に問題がある場合は、「餌をやると途端にカラスが大量発生する」といった極端な答えをします。いわば思考に余白がない状態になっているのです。そこでさまざまな考え方を提示することで、「生きにくさ」を感じないですむ手伝いをすることも、作業療法士の大切な役割のひとつです。
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先生情報 / 大学情報
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授 西田 斉二 先生
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