1回の接種で効果を発揮、注射によらない子どものためのワクチンを!
なぜ子どもはワクチンを何度も打つのか
小児科には感冒(かんぼう)や胃腸炎の子どもがよく来院します。子ども、特に乳幼児はまだまだ発育途上で免疫力が弱いため、感染症にかかりやすく重症化しやすいからです。そうした感染症の予防に欠かせないのがワクチン接種です。しかし、大人と違って子どもは1つのワクチンを複数回打たねばならないことが多く、中には3回ないし4回と接種が必要なワクチンがいくつもあるため、複数のワクチンを同時に注射する場合もあります。そこで、できるだけ1回の接種で済み、注射を用いずにウイルスや細菌に対する免疫をより効果的に発揮するような子ども用ワクチンの研究、開発が進められています。
ワクチンは健康な大人の免疫を参考に作られている
そもそも大人は1回で済むワクチンを、なぜ子どもは複数回接種しなければならないのでしょうか。一般的なワクチンは、大人の高い免疫力を参考に開発されます。ワクチンが作られると、まず大人のマウスなど動物で試し、反応が見られたら健康な大人の人間で検証します。次に子どもです。しかし子どもは免疫力が弱いため、大人と同じような反応が出にくいのです。ワクチンが人の体に入ると、体は「敵が侵入した」と認識して抗体を作りますが、免疫力が弱い子どもは敵を認識する力も弱く、そのため抗体も作られにくく反応も出にくいわけです。それならば初めから子どもの免疫力の理解に成り立った子ども向けのワクチンを作ろうという発想で、研究が進められています。
子ども用ワクチン開発のために
子どもの免疫力を高める物質を組み入れたワクチンを開発するために、母親と赤ちゃんとをつなぐ胎盤の中にある血液「臍帯血(さいたいけつ)」を子どもの血液の代用品として用いた研究が行われています。また、マウスなど動物の子どもを使い、注射ではなく鼻から投与するワクチンの研究も進んでいます。子どもの免疫システムに似た環境下での研究を重ねることで、体への負担が少なく効果も高い、子どもに特化したワクチンの開発と実用化が待たれています。
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先生情報 / 大学情報
和歌山県立医科大学 医学部 医学科 小児科学講座 教授 徳原 大介 先生
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小児科学、粘膜免疫学先生が目指すSDGs
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