講義No.13457 看護学

看護の感染予防を研究する

看護の感染予防を研究する

看護の役割

現在の日本の医療は、病気やけがの状態に応じて急性期・回復期・慢性期の段階に区分されており、看護においてもケアの手法や患者への接し方が段階ごとにそれぞれに違います。特に急性期は患者の症状が突然悪化する可能性が高いことから、変化を早期に察知するために心電図などのモニタリングが看護師の重要な役割です。また、病気に立ち向かう前向きな気持ちを保つための心のケアや家族へのサポートも欠かせません。

直接接触感染を防ぐ

急性期医療の現場での大きな課題は、体力が低下した患者への感染対策です。そのためにはまず、多くの患者と接触し、かつ外部への行き来のある看護師が、自ら感染経路とならないように予防策を徹底する必要があります。患者に触れることで起こる直接接触感染を防ぐには、手指衛生が基本であり、看護師は業務中に何度となく手洗いやアルコール消毒を行います。しかし、頻繁なアルコール消毒は肌荒れを引き起こし、それが悪化して傷ができると、傷口に病原菌が付着して新たな感染経路をつくり出すという悪循環を引き起こします。そのため、アルコール以外の消毒薬の開発研究が進められています。自然由来のアミノ酸であるアルギニンや、梅酢にも同様の殺菌効果があることが確認されています。

ウイルスの生存時間

ほかに、くしゃみなどで飛散したウイルスが家具や衣類に付着し、それに触れることでの間接的な感染にも注意が必要です。ウイルスの生存には生物の体内に入る必要があり、外部に出たウイルスは一定時間が経過すると死んでしまいます。間接的な感染を防ぐために、外部でのウイルスの生存条件や生存時間を正確に解明する研究も進められています。
目に見えないものへの対策である感染予防は、研究によりエビデンスを得ることで視覚化し、それに基づいた確かな行動が求められます。看護学では、実践的な看護技術の習得はもちろん、より安全なケアを患者に提供するために、解決が必要な課題は研究として深く追究する姿勢が大切です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山県立医科大学 保健看護学部 保健看護学科 成人看護学 准教授 池田 敬子 先生

和歌山県立医科大学 保健看護学部 保健看護学科 成人看護学 准教授 池田 敬子 先生

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基礎看護学、感染論

メッセージ

人との出会いはとても大切ですが、日常の中で違う環境に暮らす人と出会うのは難しいでしょう。そこで、本の中で人と出会うことをおすすめします。看護など医療を学びたいなら、病気を経験した人の手記などを読むといいでしょう。最近はSNSで発信している人もいますが、本は長い文章で詳しく書いてあり、何度も読み返せます。ぜひ本を読んで、感性を高めてください。読む時間がないのなら、写真集でも構いません。違う人の目から世界を見ることで、自分にはない感覚に気付かされることもあります。

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本学は、和歌山県唯一の公立大学で、医学部、保健看護学部、薬学部の3学部を擁する医療系総合大学です。各学部での専門教育に加え、学部の垣根を越えたケアマインド教育等を実施し、高度医療人の育成に力を注いでいます。
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