看護の感染予防を研究する
看護の役割
現在の日本の医療は、病気やけがの状態に応じて急性期・回復期・慢性期の段階に区分されており、看護においてもケアの手法や患者への接し方が段階ごとにそれぞれに違います。特に急性期は患者の症状が突然悪化する可能性が高いことから、変化を早期に察知するために心電図などのモニタリングが看護師の重要な役割です。また、病気に立ち向かう前向きな気持ちを保つための心のケアや家族へのサポートも欠かせません。
直接接触感染を防ぐ
急性期医療の現場での大きな課題は、体力が低下した患者への感染対策です。そのためにはまず、多くの患者と接触し、かつ外部への行き来のある看護師が、自ら感染経路とならないように予防策を徹底する必要があります。患者に触れることで起こる直接接触感染を防ぐには、手指衛生が基本であり、看護師は業務中に何度となく手洗いやアルコール消毒を行います。しかし、頻繁なアルコール消毒は肌荒れを引き起こし、それが悪化して傷ができると、傷口に病原菌が付着して新たな感染経路をつくり出すという悪循環を引き起こします。そのため、アルコール以外の消毒薬の開発研究が進められています。自然由来のアミノ酸であるアルギニンや、梅酢にも同様の殺菌効果があることが確認されています。
ウイルスの生存時間
ほかに、くしゃみなどで飛散したウイルスが家具や衣類に付着し、それに触れることでの間接的な感染にも注意が必要です。ウイルスの生存には生物の体内に入る必要があり、外部に出たウイルスは一定時間が経過すると死んでしまいます。間接的な感染を防ぐために、外部でのウイルスの生存条件や生存時間を正確に解明する研究も進められています。
目に見えないものへの対策である感染予防は、研究によりエビデンスを得ることで視覚化し、それに基づいた確かな行動が求められます。看護学では、実践的な看護技術の習得はもちろん、より安全なケアを患者に提供するために、解決が必要な課題は研究として深く追究する姿勢が大切です。
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