「五大疾病」の1つ、精神疾患の看護ケアを科学的根拠に基づき探求
誰でも発症する可能性がある「精神疾患」
健康な人は、「心の病」で苦しんでいる人に対して、特別な病気といった見方をしがちです。しかし、精神疾患は誰でもかかる可能性がある疾患です。精神医療に特化し、看護ケアの方法やその効果を研究するのが「精神看護学」です。学問として柱立てされてからの歴史はまだ20年ほどですが、近年、精神疾患の患者数が大幅に増加していることから、研究と実践の発展が注目されています。
「心」の中は見えないから、専門知識が重要
多くの疾患は、患部の状態や検査数値などによって重症度を判断することができます。ところが精神疾患の場合、心の中は外から見えないので、看護ケアには専門的な知識が必要です。
例えば、うつ病患者との接し方の場合、「頑張って! しっかりしてね」という言葉は、優しい励ましのように思われますが、実はうつ病患者にとって「頑張れ」は、むしろ責め言葉になります。頑張り続け、心が疲弊してしまった結果がうつ病なので、よく頑張ったねと頑張りを認める方が、本人にとっては安心できる言葉なのです。また、統合失調症による妄想や幻聴は、現実の出来事ではないので理解しようがありません。症状の背景にある、不安感や苦悩を共感することが、患者との信頼関係を築く上で重要です。
求められる精神看護のエキスパート
友人とすれ違ったので、挨拶したら無視された時、あなたならどう考えますか。「無視された」ととらえると、腹が立ったり悲しくなったりしますが、「何か悩みごとがあって自分に気づかなかったのかも」と受け止めれば、相手のことを心配し、話を聞いてあげようという気持ちになれるはずです。相手の行動や発言をどのように受け止めるかは、自分自身のストレス対処においてとても重要なことです。精神看護学においてはこのような心の構造や機能についても学びます。
厚生労働省が、精神疾患を「五大疾病」の1つとして医療計画を策定するほど患者数が増え続ける中で、精神看護のエキスパートが求められているのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
佐賀大学 医学部 看護学科 教授 藤野 成美 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
精神看護学、教育学、心理学、行動科学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?