暮らしの実際を見つめ、一歩先を照らす、まちづくりの研究

暮らしの実際を見つめ、一歩先を照らす、まちづくりの研究

暮らしの総体としてのまちづくり

「まちづくり」や「都市計画」は、学問としては主に空間や施設、モノなどを扱う分野として知られます。しかし、そこに関わる、あるいは生活する人が存在する限り、暮らしや人間関係、生活環境といった幅広い観点を含めてデザインし、考える学問分野でもあります。例えば高齢者を支えるコミュニティや過疎化が進む地域の活性化、あるいは地域おこしや歴史保全など、実にさまざまな切り口からの研究が可能です。現代社会はあらゆる分野が高度に専門・細分化され、それによってもたらされる恩恵は手放せませんが、暮らしの総体としてのまちづくりを考える上では、専門性にとらわれず、トータルに捉える視点が重要です。

実践・行動型の現場主義

まちづくりにはさまざまな研究方法があります。例えば地域の中に入り、行動しながらその地域の課題を解決する方法を考えていく「実践型」「行動型」の手法があります。多くの人が関心をもつ災害も、地域住民の相互の助け合いを日常的に観察することで、災害という非常時に地域の福祉が果たす役割を捉えることができます。また経済的に恵まれない子どもたちを助けるために全国に普及した子ども食堂は、大変重要な役割を担っています。しかし子ども食堂の普及の中で、逆に地域のセーフティーネットからはじかれてしまう、更なる弱者が生まれることもあり得るといった問題は、深く地域に関わることでしか知ることができません。暮らしや地域の小さな声や現象をしっかり観察することが大事です。

暮らしの現場の実際を見つめ、一歩先を照らす

もちろん、地域の問題は複合的な要因が絡み合っていますから、研究者が地域に入ったとしても、すぐに何らかの解決や大きな発見に結びつくとは限りません。しかし地域の人たちと共に考え、実践することで、生活や暮らしの現場の「実際を見つめ、一歩先」を照らすことは可能です。そして、その光を手掛かりとして、より良い地域のあり方に向けた道筋を具体化させることこそ、学問としてのまちづくりがもつ大切な役割です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 地域社会・環境コース 教授 倉原 宗孝 先生

岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 地域社会・環境コース 教授 倉原 宗孝 先生

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まちづくり、都市計画

先生が目指すSDGs

メッセージ

少し抽象的な話になりますが、自分自身だけでは「自分」になることはできません。誰から生まれ、どこに暮らし、何が好きかといった、自分以外の何かとの関わりがあってはじめて「自分」が形成されます。そうして育まれてきた「自分」をぜひ大切にしてほしいと思います。同時に、人は自分を守ろうとすると自分を閉ざしてしまいがちです。逆に自分を開くと弱みをさらし、思わぬ攻撃を受けることもありますが、それでも自分を開くことでこそ得られるつながりや助けがある(それは「しなやかな強さ」である)ことも、知ってほしいと思います。

先生への質問

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岩手県立大学に関心を持ったあなたは

大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。