日本のイタリア料理産業はどのようにしてつくりあげられたのか
日本のイタリア料理店
日本のイタリア料理店はなぜ量と質においてこれほど卓越しているのでしょうか。1970年代までは日本人にとってはイタリア料理はまったく馴染みがないものでした。現在では、レストランばかりではなくコンビニやレトルト食品でも実に美味しいイタリア料理を味わうことができます。このことから80年代の半ばから90年代にかけてのイタリア料理ブームを支えた人材はどのようにして育成されたのかをインタビューや資料の分析によってあきらかにしようとしてきました。
日本独自の修業システム
日本では、料理人以外の人々が、イタリアとの文化交流のために、料理人をイタリアで学ばせる教育プログラムを作りあげてきました。また、早くにイタリアで料理を学んだ人々が日本でイタリア料理店を開業し、自分たちも同様に後輩たちをイタリアに送り出していったのです。これは、日本人の料理人を受け入れたイタリア側にもメリットがありました。熱心で技術の高い日本人を、一時的な労働者として安い賃金で雇うことができたからです。そして、地域色豊かなイタリア料理の真髄を学ぶために、多くの若者がイタリアに渡り各地を転々としながら「修業」をすることが、この業界ではキャリアアップのために不可欠な過程になっていったのです。
食を支える仕事についての社会学
新しい仕事の世界は社会の中で長い時間をかけて作り上げられていくものです。また、イタリア料理店が増えていくためには、そこで働く人々、ワインや食材を納入する業者が不可欠です。そうした仕事に従事する人たちの、技術を磨くための機会やシステム、同じ産業を盛り上げようとする人々のネットワーク、そしてイタリア料理を愛し日本に伝えるために努力をしようとする人々のこだわりやアイデンティティなくしては、日本のイタリア料理は成立しえなかったのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
大正大学 人間学部 人間科学科 教授 澤口 恵一 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会学、人間科学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?