データを頼りに複雑な人の移動を再現し、現実空間で生かす

データを頼りに複雑な人の移動を再現し、現実空間で生かす

人の動きを再現する

サイバー空間に現実空間をそっくりそのまま再現する技術を「デジタルツイン」といいます。現状では、動きのない建物などを再現することはできても、複雑な要因が絡まる人間の移動の様子までは再現できていません。ゲームで同様の試みがなされていますが、再現はプレイヤー周辺に限定されています。静的なもの、あるいは一部の空間だけでなく、私たちと同じように振る舞い、移動する人の行動モデルをつくり、コンピュータ上に再現された現実空間の中で動かすことができれば、まるで神のようにこの世界を自在に観察できるようになります。

人流データをつくる

人の行動モデルを再現するためには、外部から観測されたデータを用いることも有効です。従来はアンケート調査によって、何時に家を出て、どこに立ち寄り、何時に会社や学校に到着するのかといった数多くの項目ごとに回答を収集してモデル化していました。近年ではスマートフォンの位置情報やGPSアプリケーションなどからより動的なデータが得られます。新型コロナウイルスの感染拡大時に、駅や商業施設の混雑具合を把握することができたのも、こうしたツールによるものです。アンケートから得る従来型のデータと、位置情報やGPSから得られるデータを組み合わせることで、粒度の高い人流データをつくることができます。

行政、商業、災害対策にも

今後の研究によって現実と同様に移動する人のモデルが完成すれば、行政においては都市計画(まちづくり)、商業においてはビルやテナント・店舗の計画、自治体においてはイベント時の渋滞対策など、幅広い分野に役立てられます。また災害大国日本においては、災害時の人の流れを再現することで、救急車や救援物資をどこにどれぐらい配置すればよいかもわかるようになるでしょう。さらには短期的な移動だけでなく、旅行や移住といった長期的な人の移動も含めて、人の移動に伴う社会の課題をさまざまな場面で解消することも期待されているのです。

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大阪経済大学 経済学部 経済学科 准教授 樫山 武浩 先生

大阪経済大学 経済学部 経済学科 准教授 樫山 武浩 先生

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メッセージ

受験勉強を頑張って大学に入学しても、単に授業を受けるだけではもったいないです。大学で学ぶ醍醐味(だいごみ)は、研究に触れられることです。研究という視点をもつことで、それまでは科目ごとに区切られているように思えた個別の授業が、あるテーマに基づいて関連し合い、それらを複合的に学ぶことが社会課題の解決につながるという実感をもてるようになるでしょう。そのためにもぜひ学内に数多くいる教員を訪ねて、それぞれの研究内容について知ってもらいたいと思います。

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