地域を変えたい! 当事者や住民の思いを後押しする働きかけを
「望ましい地域社会」は人それぞれ
地域福祉学は、支援を必要とする当事者(障害者や高齢者、貧困や生きづらさを抱える人など)や住民が「主体」となって、地元企業、福祉作業所の職員、ソーシャルワーカー、自治体の職員と対話しながら、望ましい地域をつくることを目的とした実践的な学問です。それぞれの立場や価値観によって「望ましい姿」は異なるため、対話の道のりは平たんではありません。しかし、意思決定する主体は、「当事者を含む地域住民」であるべきです。住民たちが自らの意思で望ましい地域をつくっていけるように、地域福祉学の研究者は対話の現場に立ち会い、取り組みの実践と評価に関わります。
自粛ムードでも進んだ支え合い
コロナ禍においては自治会活動を自粛する地域が多くみられましたが、ある地域ではこの時期に高齢者の買い物の送迎や休校中の子どもたちへの居場所提供など、自治体が主体となってさまざまなボランティア活動をスタートさせました。これは、住民が各世帯の困りごとを丁寧に聞き取ってつくった住宅地図「支え合いマップ」をもとに対話を進め、支援活動の実践に成功した事例です。
住民を後押しする「投げかけ」
地域の取り組みは、福祉の専門家や行政の物差しで達成度や結果を評価されることがあります。しかし、これだけでは住民や当事者の意識や行動のささやかな変化が見過ごされがちです。一方、地域福祉学の研究者による評価とは、主体となる人たちが「望ましい方向へ進んでいる」という手応えや自信につながる変化を発見し、前に進めるよう働きかけるものです。例えば、地域の会合で「私たちが責任を持つからやりたい」という住民の意欲的な発言があったときに、「皆さんの間で初めて出た言葉ですね」という評価を投げかければ、彼らは自らの進化に気づき、よりポジティブな気持ちで取り組めます。小さな地域こそ研究者が対話の場に長期的に関わり、望ましい地域社会をつくろうとする住民たちの思いを後押しすることが求められています。
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先生情報 / 大学情報
岩手県立大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 佐藤 哲郎 先生
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