講義No.12364 薬学

美容や健康をもたらす宝を探せ! 生薬研究の役割

美容や健康をもたらす宝を探せ! 生薬研究の役割

「漢方」は日本独自の医学

日本は、漢方薬の原料である「生薬」のほとんどを中国からの輸入に頼っています。しかし、漢方そのものは日本独自の医学です。厚生労働省、農林水産省、日本漢方生薬製剤協会は、漢方を守るために生薬の国内生産拡大に取り組んでいます。生産者を増やすためには、作り手のメリットを明確にする必要があります。そのためにも、生薬の成分や効能を科学的に究明し、産地の特徴を明らかにすることが大切です。

私たちは生薬について何も知らない

テレビCMでも見かける代表的な漢方薬「葛根湯」は、風邪のひきはじめに効くとされています。では、どんな成分が風邪のどんな症状に有効なのか、実はその答えをまだ誰も知りません。配合される7つの生薬それぞれに「どんな成分がどれくらい含まれ、それがどんな症状に効いているのか」はわかっていないのです。これを明らかにすることは、品質をコントロールするためにも重要です。生薬は、生息地や栽培方法によって成分が異なります。つまり、同じ名前の薬でも、含まれる成分の割合や性質が異なることがあるのです。生薬学は、成分を正しく評価し、品質の安定化に貢献します。

生薬の研究は「宝探し」

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士は、土壌中の微生物が作り出す化合物を発見し、熱帯地方における深刻な病気の治療薬開発に大きく貢献しました。私たちは、自然が作り出す化合物から恩恵を受けています。生薬学の最大のテーマは、多くの人の役に立つ、新しい化合物を見つけ出すことです。生薬は、薬だけではなく、食品や化粧品にも使われます。例えばシナモン(桂皮)は、葛根湯にも含まれる代表的な生薬ですが、アップルパイなどの食品、石鹸などの化粧品にも使われています。
生薬には、まだ眠っている力がたくさんあります。発見された化合物が、多くの人の病気を治し、もっと身近な健康や美容に関する悩みを解決するかもしれません。生薬の研究はまさに「宝探し」なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

城西大学 薬学部 薬科学科 准教授 鈴木 龍一郎 先生

城西大学 薬学部 薬科学科 准教授 鈴木 龍一郎 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

生薬学、天然物化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究だけに没頭できるのは、学生のうちだけです。この期間にどれだけ集中したかが将来を決めます。そのためにも、のめり込める分野を選ぶことが大切です。生薬の研究は、多くの失敗の中でようやく一つの成功を掴むような、泥臭い作業です。失敗を恐れず、何度でも乗り越えるポジティブさが必要です。その分、新しい化合物を発見するなど、成果が得られた時には、大きな喜びがあります。多くの選択肢に触れ、ぜひ自分に合う大学、学部、研究室を選んでください。

先生への質問

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城西大学は、文系・理系・医歯薬系の5学部8学科で構成された「国際性」・「専門性」を学べる総合大学です。
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