美容や健康をもたらす宝を探せ! 生薬研究の役割
「漢方」は日本独自の医学
日本は、漢方薬の原料である「生薬」のほとんどを中国からの輸入に頼っています。しかし、漢方そのものは日本独自の医学です。厚生労働省、農林水産省、日本漢方生薬製剤協会は、漢方を守るために生薬の国内生産拡大に取り組んでいます。生産者を増やすためには、作り手のメリットを明確にする必要があります。そのためにも、生薬の成分や効能を科学的に究明し、産地の特徴を明らかにすることが大切です。
私たちは生薬について何も知らない
テレビCMでも見かける代表的な漢方薬「葛根湯」は、風邪のひきはじめに効くとされています。では、どんな成分が風邪のどんな症状に有効なのか、実はその答えをまだ誰も知りません。配合される7つの生薬それぞれに「どんな成分がどれくらい含まれ、それがどんな症状に効いているのか」はわかっていないのです。これを明らかにすることは、品質をコントロールするためにも重要です。生薬は、生息地や栽培方法によって成分が異なります。つまり、同じ名前の薬でも、含まれる成分の割合や性質が異なることがあるのです。生薬学は、成分を正しく評価し、品質の安定化に貢献します。
生薬の研究は「宝探し」
2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士は、土壌中の微生物が作り出す化合物を発見し、熱帯地方における深刻な病気の治療薬開発に大きく貢献しました。私たちは、自然が作り出す化合物から恩恵を受けています。生薬学の最大のテーマは、多くの人の役に立つ、新しい化合物を見つけ出すことです。生薬は、薬だけではなく、食品や化粧品にも使われます。例えばシナモン(桂皮)は、葛根湯にも含まれる代表的な生薬ですが、アップルパイなどの食品、石鹸などの化粧品にも使われています。
生薬には、まだ眠っている力がたくさんあります。発見された化合物が、多くの人の病気を治し、もっと身近な健康や美容に関する悩みを解決するかもしれません。生薬の研究はまさに「宝探し」なのです。
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先生情報 / 大学情報
城西大学 薬学部 薬科学科 教授 鈴木 龍一郎 先生
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