身近な植物が薬になるかも? あなたの知らない「生薬」の世界
古くから使われてきた天然の薬-生薬
地球上には、病気の治療や健康の維持に効果のある成分を含む植物が数多く存在します。人間は古くから、そのような植物を生薬(しょうやく)として利用してきました。生薬の多くは植物に由来しますが、動物や鉱物を由来とするものもあります。
生薬の薬効成分を科学的に分析する
例えば、センブリという薬草をお茶にしたセンブリ茶は非常に苦いのですが、胃腸の調子を整えて食欲の増進を促す働きがあります。ゲンノショウコという薬草は、煎(せん)じて飲むと下痢止めの効果があります。またケイヒ(シナモン)は、市販の胃腸薬の多くに配合されています。このように、生薬を単品で用いる方法のほか、漢方薬のように複数の生薬を組み合わせて用いることで、多様な効果を得ようとする方法もあります。
生薬や薬効があるとされる植物などを科学的に分析し、有効とわかった成分をそのまま、あるいは一部構造を化学合成により変換して新しい薬を開発する研究も、世界各国で盛んに行われています。コンピュータや人工知能がこれだけ飛躍的に発達した今の時代でも、全くのゼロの状態から人工的に開発することのできた薬は非常にまれです。人間が天然物から学ぶべきことは、いまだに数多く残されているのです。
身近にある薬のヒント
ごくありふれた園芸用の草花にも、分析してみると意外な効能が見つかる場合があります。少し前になりますが、庭で栽培されているようなユリ科植物の球根から、抗がん活性を示す成分が発見されたことがありました。園芸植物は広く栽培されていますので、簡単に入手できるという利点があります。地球上に何万種類とある植物の中で、成分の分析が行われている植物は、ほんの1、2割に過ぎません。私たちのすぐ身近に、思いがけない「宝」が眠っているかもしれないのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京薬科大学 薬学部 医療衛生薬学科 漢方資源応用学教室 教授 三巻 祥浩 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
漢方薬物学、生薬学、天然物化学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?