高級食材「ツバメの巣」から「自然共生」を考える

高級食材「ツバメの巣」から「自然共生」を考える

ツバメ専用マンション

インドネシアやマレーシアをはじめとした東南アジアの国々には、中華料理の高級食材「ツバメの巣」を収穫するビル「ツバメ専用マンション」があります。ビルの中ではジャワアナツバメが繁殖のために巣を作ります。もともとは、このツバメが繁殖する自然の洞窟で、巣が収穫されていました。しかし、高所で危険なうえ、乱獲でツバメの数も減っているため、街中にツバメ専用のビルを作り、営巣を促すようになったのです。このビルには最上階のツバメの出入口以外に窓がなく、洞窟環境を再現しています。

収穫者の税金を生態系の利用と保全のために使う

収穫者がツバメの巣を採り続けるためには、自分一人の力では解決できない問題があります。例えばビルでの繁殖には、餌場となる周囲の森林を適した状態に維持する必要があります。現地では、巣の売り上げに対する税金があり、この制度や税収の使途について2018年ごろから調査が進められています。収穫者たちは、巣の持続的な収穫につながる税収の使い方が実現するよう期待しています。その候補となる使途として、泥炭湿地林の火災対策があります。泥炭とは、枯れた植物が分解されずに堆積している炭素の層です。大面積の泥炭湿地林が農業のために乾燥化されてきました。これがひとたび燃えると、大量のCO₂が放出され地球温暖化を進めてしまうのです。乾燥化された泥炭湿地林の火災を防ぎ、ツバメが好む森林へと再生するための資金として、収穫者からの税金を用いるのです。

ポイントは持続的な収穫

自然環境からの恵み「生態系サービス」を得ている人たちが対価を支払い、持続的に生態系サービスを享受しながら自然環境も維持できるのが望ましい形です。この仕組みを実現するためには、学際的な研究が不可欠です。ツバメの巣の例では、ツバメの餌となる昆虫の供給力などを考慮した最適なビルの数と配置を検討したり、収穫者と森林所有者の間の相互理解が進む対話方法を考えることが必要です。「自然共生」の実現には、色々なアプローチが求められるのです。

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大阪大学 人間科学部 共生学科目 コンフリクトと共生分野 准教授 太田 貴大 先生

大阪大学 人間科学部 共生学科目 コンフリクトと共生分野 准教授 太田 貴大 先生

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色々なことがブラックボックス化しています。便利なシステムの背後に、自分の知らない世界があることに、危機感と好奇心を持ってください。高度で複雑な社会では、「自分にできることは何もない」とか、「自分は何もしなくても誰かがやってくれる」とか、「自分には何の関係もない」と思ってしまいがちです。しかし、人はまわりの環境と多様な関係性を持つことで生きられますし、どこかで何かとつながっています。色々な物や人と積極的に関わりを持ってください。そして自分の手や体を使い、新しい何かを生み出していってほしいです。

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