認知症に漢方薬が有効か? ー漢方を科学する研究ー
漢方を科学して効用を検証
漢方薬は、長い歴史の中で、薬効を有するさまざまな生薬を組み合わせてつくられた配合薬で、実際に患者さんに使われてきた薬なので効くことは間違いないでしょう。しかし、どの生薬をどう組み合わせたらどのような病気に効くのかは専門の漢方医でないとわかりません。漢方薬の作用を、一般の医師・薬剤師にも理解できる現代の科学で検証するために、行動薬理学という薬の作用を動物実験で検証する手法を用いて、漢方薬が本当に効くのか、さらにその作用の仕組みについて調べられています。
漢方薬の作用を動物実験で検証
現在、認知症の治療に使われている抑肝散(よくかんさん)という漢方薬があります。この薬はもともと小児の不安症に用いられていたのですが、2005年に認知症の周辺症状に有効であることが報告され、今では多くの病院で使用されるようになりました。
この抑肝散が本当に認知症に有効であるか、認知症の動物モデルを用いた動物実験で確かめられ、その作用の仕組みまで明らかになりました。これにより、抑肝散の作用が西洋医学的な考え方で理解できるようになり、一般の医師、薬剤師も漢方薬を正しく有効的に使うことができるようになりました。これは薬学の認知症医療への大きな貢献です。
薬の数を減らし、治療の選択を増やす
現代の高齢者は、複数の疾患を併せ持ち、それぞれの症状に応じた薬が処方されますので、1回に服用する薬の種類や量が多くなり患者さんの服用時の悩みにもなっています。西洋薬は単一成分でできているものが多く、頭痛や腹痛といったそれぞれの症状ごとに薬が処方され、それぞれの副作用を止める薬も処方されるので、どうしても数が増えます。一方、漢方薬は、基本的に多くの生薬が配合されてできており、一つの漢方薬で複数の効果を促せるため、薬の数を大幅に減らすことができるのです。
医師、薬剤師にとっては治療や薬の処方の選択肢が増え、患者さんも負担を減らすことができます。医療現場をみても、漢方を科学することの意義は大きいといえます。
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福岡大学 薬学部 教授 岩崎 克典 先生
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