健康寿命を延ばす「甘草」を日本で育てるために

健康寿命を延ばす「甘草」を日本で育てるために

砂糖の150倍甘い薬草

甘草(カンゾウ)はマメ科の植物で、根の部分に薬効成分があり、漢方薬の7割程度に使われています。また、砂糖の150倍ほどの甘味があり、甘味料としても使われている、工業的にも重要な植物です。甘草の主な原産地は中国の北部やモンゴルなどの寒くて乾燥した地域です。高温多湿な日本では栽培が難しく、品種改良によって耐暑性を高めるための研究が進められています。

人為的に突然変異を起こさせる

植物の品種改良にはいくつかの手法があります。耐暑性のような性質には、多数の遺伝子が複雑に関係するため、遺伝子組み換えといったバイオテクノロジーの手法が使えません。そこで、人為的に突然変異を起こさせる「突然変異育種」という手法が用いられています。具体的には、無菌培地で発芽させた種を中程度の高温で育成し、生き残ったものから、カルスと呼ばれる植物細胞の塊を作ります。これにイオンビームなどを当てて、突然変異を起こさせるのです。それを高温の環境で育てて、突然変異をさせた細胞由来の植物を再生させます。今度は屋外で育ててみて、日本の夏で育つかを検証します。
甘草は、成長して根が薬として使えるようになるまでに約3年かかります。耐暑性が高まっても薬効成分が少なくなってしまうなどの可能性もあり、1度で成功するとは限りません。品種改良を成し遂げるまでに、少なくとも10年かかる息の長い取り組みなのです。

飢餓を無くし、地球環境を改善する

日本で甘草の栽培が可能になり、安心安全な甘草が安価に入手できるようになれば、健康寿命が延伸され、社会保障費の削減にもつながります。耐暑性を高める品種改良の方法は他の植物にも適用でき、野菜などの作物の改良にも役立ちます。
現在でも地球上で10%の方が飢餓に苦しんでいます。食料増産は人類の喫緊の課題です。農地改善や農業技術の発展に加え、植物自身を改善して生産性をあげることも必要です。そのための研究は、地球環境の改善にも役立つものです。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 農学部 農学科 講師 増田 優 先生

東海大学 農学部 農学科 講師 増田 優 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

植物育種学、遺伝育種学

先生が目指すSDGs

メッセージ

少し生物学に興味があるけれど、今はまだやりたいことが分からないなら、ぜひ農学部へ進むことを考えてください。農学で学べる範囲はとても広いからです。主に人間の生命科学を扱うのは医学ですが、農学は人間以外のすべての生命科学を扱います。動植物はもちろん、小は遺伝子から、大は環境までに及びます。農学部なら学問を進めるうちに興味のあるテーマが見つかり、そこに突き進むことができるでしょう。本学農学部は、併設の農場などで動植物と身近に触れ合いながら研究ができる恵まれた環境です。共に学べる日を楽しみにしています。

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